「は、っ、んん」
「もっと聞かせて」
「や」
それほど多くはないチャンスを、八戒はいつも的確に狙って外さない。
今日も例外ではなく、一人部屋の私の所へ忍び込んだ彼は何度も私にキスをして、そして敏感な所を余すことなく責めた。
紳士かと思いきや肉食一直線だった八戒の指先や舌が優しく蠢く。紳士なのに猛々しく、猛々しいのに優しい、何層にもなった八戒の奥が覗けるのはベッドだけだ。
「八戒、も、」
中も外も一気に責められてはすぐに達してしまうに決まっている。
それに、さっきからトイレに行く前みたいなこそばゆいゾワゾワした感じが止まらない。早く彼自身を受け入れたくて両腕を伸ばすと、顔を上げた八戒が中に入れた指はそのままにしてもう片方の肘を私の顔の横についた。
頭を撫でながら至近距離で見つめられる。恥ずかしい。延々と責められる内部の刺激に耐えられずだらしない顔をしているに違いないのに。
「見ないで」
「全部見たい」
こんなにだらしないのに?
可愛い、好きです、もっと見せて、あなたを知りたい、愛してます。
八戒の言葉はいつも私の緊張と壁を取り除く。海のような愛の中を、私が上手に泳げるようにずっと手を取ってくれる。ずっと八戒がそばにいるから、溺れる心配などひとつもなかった。
「っん、あ、っあ、イっ……」
「可愛い」
粘着質な水音が弾けるような音に変わり、大きな快楽の波の後に脱力感に襲われる。その瞬間目に入ったのは慈しむような八戒の笑顔だった。
全身をベッドに預けて呼吸を整えていると、太ももの下がやけに生ぬるい。
濡れてる……?
「……布団、濡れてる?」
「ああ、噴いちゃいましたね」
「え、何」
「調子乗っちゃってすみません、可愛くてつい」
「は……?」
私が状況を飲み込めないうちに勢いでなんとかしようとしているのがわかった。だけどそれに抵抗する気も無くて、八戒の勢いに飲まれていく。
膝を割って意外と筋肉質な八戒が潜り込み、熱い塊が中央に触れた。待ち望んでいたそれが早く欲しくて、はしたないとわかりつつも自ら腰を持ち上げる。
「それは僕がなんとかしますから、ナマエはそのまま感じていて」
にこりと微笑んだ次の瞬間、塊が内部を侵食する。一番奥まで納まった所で強く抱きしめられ、私もそれに応えるように八戒の背に腕を回した。
太ももの下に八戒の足が差し込まれて腰が浮いた状態で固定される。
「これなら冷たくないですか?」
「ん、大丈夫」
「奥にも届きますしね」
「っあ、ちょ、あっ」
八戒の言葉通り、いつもより深くまで届いたそれは奥の入口をくすぐった。こじ開けようとするでもなくただキスをするように優しく円を描き、緩やかな刺激が私を悶えさせる。
堪らず八戒を強く抱くと、愛撫はやがて衝突に変わった。
「やだな、ナマエってば、可愛い声だから」
「っふ、あっ、あっ、八戒ぃ」
「僕はそばにいますよ」
最初にした時とはえらい違いで、最近の八戒は余裕綽々だ。
私を煽るように耳元で囁くと、そのまま耳の輪郭を甘噛みして耳の中に舌をねじ込む。尾てい骨からゾワゾワと震えが迫り上がって、びくんと肩を震わせながら果てた。
それでも止むことのない律動が私の快感を叩き起す。
「ひっ、ん、あっ、う」
耳元の水音のせいで、私がどんな声を出しているか把握しきれない。もしかしたら大きな声が出ているかもしれない。可愛い、せめてはしたない、そんな程度で済む声ではなかったらどうしよう。
焦燥感に駆られるほどに八戒の指の動きひとつに敏感になっていった。
きつく抱きしめ頭を撫でられ、八戒の限界も近い事を悟る。
「は、ナマエ、キス、しませんか」
「あっ、あ、ん」
「っ、ふ」
繰り返す抽挿のせいで安定しない口元が着いたり離れたりを繰り返した。隙間で息継ぎをしながらお互いの唇を求め合いながら腰をぶつけ合う。
肌は汗ばむし、息は苦しいし、姿勢には無理がある。それなのに不快に思うことなんてひとつもなくて、あまつさえずっと続けば良いのにとすら思った。
「んん、」
「ナマエ」
優しく私の名前を呼ぶ声がした後、外れてしまいそうな所まで引き抜かれた塊が再び一気に貫き、その一番奥で大きく脈を打った。
小さな震えが収まる頃、八戒が私にもたれて心地よい重みを全身に感じる。八戒の頭を抱きしめて撫でられるのはこんな時だけだ。
「八戒、好き」
「知ってますよ。僕もあなたが好きです」
「知ってます」
目を細めて微笑んだ八戒が私を抱きしめたまま転がって、あっという間に私が八戒の上にうつ伏せになる。
胸に耳をつけるとまだ少し早い心臓の音が心地よく響いた。こんなに穏やかな気分で、こんなに幸福で、この世で一番落ち着く。
少し前の私は一体何に怯えていたのか。
ここで頭を撫でられてしまうとすぐに眠くなってしまうのに、八戒はいつも私の頭を撫でる。さっそくあくびが漏れた。
「やめてよ、寝ちゃう」
「おやすみなさい」
「やだ……」
「可愛い寝顔を僕に見せて」
「馬鹿」
やだな、また寝てしまう。
瞼を閉じれば心臓の音が子守唄になって、魂ごと八戒の胸に落ちていった。