関さんは腰フェチ

「んっ、は」
「つらい?」
「だいじょ、ぶ、です」

既に一回果てているにもかかわらず、大輔さんは疲労のヒの字も伺わせないくらい余裕の表情で私を覗き込んだ。
いたずらっぽく笑う年上の彼が見られるのは私だけの特権。
……そして、この笑顔の後に待っている“理想の上司”の裏の顔を見られるのも、私だけの特権。

「ひ、」

ふいに最奥までねじ込まれた彼自身を引き抜かれ、情けない悲鳴が漏れる。
大輔さんが笑いをこらえるように喉を鳴らし、私の太ももを抱えて体位を入れ替えた。腰を突き出すようにしてうつ伏せになると、すぐに温かい気配が背中を覆う。
ぽっかりと空いて再来を待ちわびる濡れそぼったくぼみに、熱く脈を打った塊が触れた。

「いいかな」
「ふふ、ダメって言ったらやめるんですか?」
「それって駆け引き?」
「あっ、ちょ、」
「ごめん、駆け引き苦手なんだ」
「だからって急に」

一番奥まで貫くなんてひどい。
大輔さんは寄り添うように首筋に顔を埋め、声色だけは本当に申し訳なさそうにそう囁いた。でもきっと顔は笑ってる。
本当は嘘だって平気でつくし、上手に演技することができる大人だって、私は知っている。
紳士な一面だけが彼の全てではないことくらい、わかっていたはずなんだけど。

「ナマエのこんな姿見たら止められないな」
「いつもなのにっ、んっ、あ!」

獣のような姿勢同士の交わりなのに、大輔さんの腰使いはいつも優しい。いや、優しいというには語弊がある。正しくは「ガツガツしていない」だろうか。
もっと正確に表現するならば「息の根を止める生命線を知りながら最小限の力でいたぶる」とでも言うべきか。
そういえば、肉食獣はそうやって獲物を弄ぶ事もあるらしい。
さっきまで耳元で甘く囁いていた唇も今はずっと遠くて、大輔さんは私の腰を両腕で掴むように抱えて狙いを定めていた。
私の弱いところをわざと少しだけ外して一定のリズムで突き上げる。時折指先が腰から脇にすべって声を抑えきれない。
ひっきりなしに喘ぐ私がいい加減焦れったくなっておねだりするのを待っているのだ。
いつも大輔さんが焦れるまで我慢していようと思うのに、今日も今日とて失敗に終わる。

「だ、大輔さん……」
「何?」
「おねがい」
「何が?」
「意地悪」

楽しそうにとぼけている大輔さんの声が聞きたくて、何度も同じ会話を交わす。
涙目で振り向いてみれば、満足そうに微笑む大輔さんが乾いた唇を舐めて私に覆いかぶさった。

「ごめんね?」

ほら、こうやって思ってもいないことを平気で言う。そしていよいよ息の根を止めるように、私の弱点を抉った。

「あっ、やだ、だめ……!」
「うそつき」
「んっ、大輔さん、やだぁ」
「本当のこと教えて」

だけど私もそれなりにいい歳をした大人なので、思ってもいないことを平気で言えるのだ。やだ、だめ、やめて、なんて思ったこと、一度だって無い。
大輔さんは嘘が嫌い。否定の言葉も嫌い。強がる私のことは早く堕としたいと思ってる。
でも私は、そうやって私を追いかける大輔さんが大好きなのだ。

「っん、好き」
「ナマエ……」
「もっとして」
「っ我慢できないな、ナマエ、好きだよ」
「わたしも、っ、あっ、あ」

大輔さんの体重がのしかかり、私は素直に重力に負ける。汗ばむ皮膚と皮膚が重なり、階段を駆け上るように快楽の波が押し寄せた。

「あれ、イっちゃった?」
「大輔さんの意地悪」
「ごめん、もう少し付き合って、ね」

私が果てた後、大輔さんは今度こそ自分の欲望を叶えるようにわがままに動き出す。敏感になった私の中は大輔さんのわがまますら心地よい刺激になってぎゅうぎゅう締め付けてしまう。
そして程なくして余裕を失った大輔さんは、苦しそうに吐息を漏らしながら一番奥で脈を打った。
大輔さんの鼓動を背中に感じながら果てる瞬間は、何度味わっても言葉にならない。
強いて言うのであれば、

「しあわせ」

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