潔くんはおしおきとか言っちゃうタイプ

※大幅なキャラ崩壊、解釈違い注意

 

しょうがないと思うんだよね。ほら、付き合いも長くなるとデートだって行く場所なくなってくるし、大学生がお金使いまくるのもどうかと思うし、外暑いし、日焼けイヤだし、彼氏はインドアだし。
そう。だから私が今こうして潔くん(彼氏)ちのベッドでごろごろしながらそのへんにあった昆虫図鑑を見ながらアイスを食べるのも、ある意味、今の私たちのあるべき姿なんじゃないかな。

「ナマエ……」
「なーにー?」
「行儀悪い」
「大丈夫大丈夫、こぼさないよ、パピコだもん」
「そういうことじゃない」

私が咥えているパピコの片割れを持った潔くんが私の側に立って高い所から見下ろしている。その影が落ちて図鑑がぼんやりと暗くなった。

「食べるならこっちで食べて」
「怠惰に生きたい」
「駄目です」
「潔くんちで怠惰に過ごすのが至福の一時なんですー」
「……」

チラッと見るとまた血色の悪い顔をして眉を顰めている潔くんと目が合って、誤魔化すように「へへっ」とわざとらしく笑ってから図鑑に向き直る。
昨日レポートを書いていた潔くんは寝不足なのだ。私の隣で寝ればいいのに。と言いたい所だけれど、アイス食べながら言うと怒られそうなのでガン無視を決め込む。

「ひゃ」
「せめて座って」
「び、びっくりした」

私が無視していることに業を煮やしたらしい潔くんは突然私を引きずり起こし、あぐらをかいた足の間に乗せてそのまま壁にもたれかかった。
潔くんて意外と力持ちなんだよなあなんて考えていると、潔くんが咥えた方のアイスが首筋をなぞり、腰から脳天に抜けるようにぞくぞくとした震えが駆け上がる。

「んんん、いさ、潔くん、」
「おしおき」
「ちょっと、あの、ヒッ、死ぬ」
「ん」

腰を抱いていた潔くんの手にアイスが渡ったのを見てホッとしたのもつかの間、ため息の後に右耳の軟骨を這うように固い感触が刻まれていった。
逃げようものにも見た目以上にたくましい腕に抱え込まれてどうしようもない。合間に聞こえる軽い息遣いがダイレクトに鼓膜を震わせて、私はもう縮こまるしかなかった。
抵抗の言葉よりも先に出るのは言葉にならない声で、それはちょっといやらしくも聴こえ、急激に羞恥心に見舞われる。

「っ、く、んう、潔、くん」

身を捩って出来うる限りの抵抗を試みると、やっと私を拘束していた腕が解かれた。
呼吸を整えながら振り向くと、潔くんはいつもの真顔を少し崩して悪い顔をしている。……出会った頃はあんな顔する人じゃなかったのに。潔くんが変わったのか、元々そういう人なのか、今となってはわからないしどっちでもいい。
悪い顔をしている潔くんは、正直ちょっとかっこいい。

「ナマエがそんな格好で寝てるせいだよ」
「そんな格好って何」
「下着」
「これはタンクトップとショートパンツっていうんだよ」
「……それは俺のタンクトップと、俺のトランクス、っていうんだよ」
「……いいじゃん! ちょっとくらい貸してくれたって」
「サイズ合ってない」
「別に平気だもん」

私がそう答えると真顔に戻ってしまった潔くんが私の脇に手を差し込み、腕の隙間から容易く内部に侵入して背中に回った手のひらがブラのホックを外した。
いや、本当に。出会った頃はこんなことする人じゃなかったんですけど。

「サイズ合ってないとこういうことも起きるんだけど」

汗ばんだ背中の上を潔くんの手が摩擦しながら離れていく様は、まるで後ろ髪を引くようだった。
潔くんの手はそのままタンクトップの襟元を摘んでぐいっと押し下げる。白昼堂々見せたくないものはギリギリ隠れている。

「平気?」
「平気、じゃない、です」

潔くんの手を振り払ったりとか、そのへんに転がっているはずの私のパーカーを羽織ったりとか、そういうことをすれば良いのかも知れない。
だけどその宇宙みたいに綺麗な瞳に射抜かれたようになってしまって動けないのだ。動いたらいけない気がして。
じっとしているといつの間にか放り投げていたアイスを潔くん越しに捉え、ようやくその呪いが解けた。内包物が口の部分からだらだらと流れ出す。

「あっ、あ、やば、やばい」
「え?」
「ティッシュ、ティッシュを!」

慌ててティッシュを引き抜いて布団を拭ったけれど、当然液体を吸収する程度しか役には立たず潔くんの布団に茶色いシミを作った。

「行儀悪いって言ったのに」
「な、ちがっ、じゃあ食べてる人にちょっかい出すのは良いんですか!」
「……知らない」
「駄目でしょ、潔くんだって悪いんだからね!」
「ナマエ、人の布団汚して逆ギレは良くないよ」

突然ド正論を突きつけられ、いや、まあ、それはそうだけど、と素直に思う。
こんな所で意地を張っても仕方ないし、私が悪いのは事実だし。三分の一くらい残っていたアイスの中身を一気に飲み干してからゴミを捨て、ベッドの下に正座してからその縁に腰掛けていた潔くんに向き直って「ごめんなさい」と素直に謝った。

「こっち来て」
「うん?」

潔くんに呼ばれるままに膝をつけば、そのまま腕を勢いよく引かれて二人でベッドになだれ込む。

「一人で寝てたのも反省して」
「一緒に寝ればいいのにって思ってたよ。ところで潔くん」
「ん」
「ベッドでアイス食べるのは行儀悪いですよ」

二人の視線の間にはまだ中途半端に残るアイスがひとつ。潔くんの体温でドロドロに溶け切っていた。
私の上にまたがっていた潔くんは右手のアイスと私を交互に見て、またあの悪い顔をした。

「え、いや、何?」

多分漫画だったら「フッ」なんてついちゃうんだろうな、といった具合の物憂げなような楽しげなような独特な笑みを浮かべたかと思いきや、ガバっと裾からタンクトップをめくりあげられ、さすがの私でも何が待ち受けているか理解した。
いやその顔はかっこいいけど。かっこいいとかそういう問題じゃないって。

「だめだめだめだめ、行儀最悪!!」
「大丈夫、俺のだから」
「暴論!」

抵抗も虚しくその数秒後には腹部にひんやりとした液体が広がっていくのを感じ、私は天井を見つめながら本日三度目の「出会った頃はこんなことしなかった」を実感したのだった。

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