右手を犠牲にしてやっとの思いで生き延びた先にあったのは、胡散臭いコミューンだった。どいつもこいつも生温くて反吐が出そうだ。
自分の残酷さに気付こうともしない連中の吹き溜まりの中では、ガバナーは一層清々しく、まだ話が出来る相手ではある。
それでもこいつもまあひでえ輩であることには変わりない。人の足元見やがって、関われば関わるほどにクソッタレだと思い知る。
ただ、俺に役割と居場所を与えてくれたことには感謝している。
俺の居場所は、かつて感じたことのない感情に溢れた場所で、ここに導いてくれたというだけで寝首をかくのをためらう理由にさえなった。
煙草の煙が部屋を漂い、ヤニの臭いで満ちていく。俺の隣には昨日の余韻を残したまま素肌に布団を被るナマエが寝ていた。
「メルル?」
「起こしたか、悪いな」
「今日はまだ行かなくていいの?」
「ああ、午後からな」
「そっか、へへへ」
甘えるように抱きついてくるナマエを撫でていると、次第にエスカレートしたナマエは俺に跨って首元にキスをし出した。
毎日のように繰り返される甘ったるいベッドでの出来事は、きっと多分、こんな腐った世界のこんなクソみたいな場所にしか存在しなかっただろう。
「大胆なハニーに会えて幸せな朝だ」
「んんっ、メルル大好き」
いつの間にか主張を始めたそこにナマエの割れ目が往復すると、あっという間に硬くなってナマエの中に飲み込まれていった。
柔らかい肉壁がムニムニと絡みついて、艶めかしく動く細い腰に合わせて快感が押し寄せる。すっかり放蕩しきったそれは、たかだか数分の情事のくせにもう果てそうになっていた。
「はっ、は、ナマエ、最高の女だ」
「だってメルルを愛してるもの」
朝日を浴びたナマエの裸は本当に美しくて、これが本当に俺の女かと目を疑ってしまいそうになる。
化粧も濃くなければ麻薬依存症の匂いもしない、こうなる前の俺とは知り合う由もないだろう。
お互いの形を体に憶えさせるようなスローな快楽の波が、起き抜けの体には堪らなく心地よい。果てるか果てないかのギリギリを探り合うように腰を揺らし合い、漏れる吐息と緩んだ表情を堪能する。
「んっ、ふ、あっ、メルル、いきたいよ」
「俺もだ」
「でもいきたくないの、っん」
「はは、気が合うな」
「このまま死んじゃいたい」
「死ぬほど気持ちよくなろうぜ」
ウォーカーを殺す時よりも、力仕事をする時よりも、何よりもナマエといる時に一番強く、右手があったならと思う。
ナマエを引き寄せてぐるりと反転し、組み敷いた。
左手だけしか繋げない事がもどかしい。キスの時にもっと強く抱きしめられないのが悔しい。なくなった右手の先を、ナマエの手のひらが包んでいる。
「ああ、ナマエ」
「はっは、あっあっあっ、メルル、」
イかせるつもりで律動すると、素直にかわいい声をあげるナマエが愛しい。ギュウと中が締まり、そこをこじ開けるように腰を打つ。奥まで届くたびに締め付けがきつくなった。
ナマエの好きな子宮口へ先端を擦り付けて、貪るようにキスをした。
「んっ、ふ、いく、メルル、いきそう」
「俺を見てイけよ」
「あっあっ、あっ、」
「ナマエ」
「あっあっあああ、メルル!」
ナマエの全身がギュッと強ばって、ドクドクと脈を打つような収縮が俺を責める。
ギリギリまで引き抜いたそれを再び再奥まで突き立てると同時に、もうそこまで上り詰めていた欲を吐き出した。
ふたりの心臓の音と、未だにだらしなく吐き出し続ける竿の脈と、ナマエの収縮が次第に揃っていく感じが、融合を感じさせた。
ウッドベリーのウスノロたちのように、絶望なんかすべて忘れて目の前のナマエを感じることができたら、どんなに幸せだろうか。
「ナマエ、愛してる」
これが最後かも知れない。
そう思えば思うほど、右手が惜しいのだ。