ダリル|1/250

やっぱり私はフィルムカメラが好きだ。一枚一枚大切に撮って、現像するまでどんな写真に仕上がるかはお楽しみ。もう一度新鮮な瞬間に立ち会えるのが良い。
何度同じ被写体を撮っても飽きない。それは、被写体が愛しい人だからなのか、それとも被写体としてとても魅力的だからなのか、未だに判断しかねる。
ジ、ジ、
シャッターを押す前にフィルムを巻き上げる作業も好きだ。絞りやピントの細かい設定をしたら、シャッターボタンを下ろす。
カシャッ
ファインダー越しのダリルは、気持ちよさそうにシーツにくるまって寝ていた。シーツから覗く筋肉質な二の腕と大きな肩甲骨はいつ見ても綺麗。パンツ1枚で寝ていたって画になるのだから被写体としては満点だと思う。
もう一枚撮っちゃおうかな。
うっすら唇を開いてすうすうと寝息を立てている姿が、なんだかいつもより可愛らしい。今日撮った写真はフレームに入れて部屋に飾ろう。

「あっ、え、ダ、ダリル?」
「んー」

フィルムを巻き上げる手にバチンとダリルの大きな手が重なるかと思いきや、たちまちシーツの中に引き込まれてしまった。慌ててカメラをサイドテーブルにあったダリルのデジタルカメラの隣に置いた。

「何撮ってんだ」
「起こしてごめんね」
「後で見せろよ」
「それはもちろん」

ぎゅうっと抱きしめられたあとにキスをされる。いつもの目覚めの儀式だ。いつもこうしてからふたりでベッドを抜け出すのだけど、抜け出す気配がない。
それどころかダリルの手はもぞもぞと落ち着きがなく、私がパジャマ代わりに着ているワンピース越しにあらゆる所を撫でている。

「ちょっと」
「夢を見た」
「え?」
「ナマエとビーチでセックスした」
「馬鹿じゃないの、」

ふたりでビーチなんか行ったことないですけど。そんなに行きたいのかな、ビーチ。たしかに暑いけど。
とかなんとか考えているうちにたくしあげられたワンピースが胸のあたりに丸まって、これならいっそ脱いでしまいたいなあなんて、まんまと嵌められた。薄いショーツごしに触れるごつごつした男の手はじんわりとあたたかく、少し冷えた体に穏やかな快感をもたらす。

「うーん」

ダリルはまだ眠そうに私の首元に顔を埋めて唸るようにつぶやいた。
それでも私の尻を揉みまくっていた手は、いよいよその中に侵入して少しだけショーツを引きずり下ろす。

「ちょっとダリル、」

寝るのかするのかはっきりしてほしい。
ちょっとだけ気分がノリつつあるのだから。私だけその気になるなんてバカみたいじゃないか。
挑発するわけではないけれど、どうせ着替えなきゃいけないんだし。自分に言い訳しながら首の周りでだぶだぶしている服を脱ぎ捨ててダリルの顔を覗き込む。

「起きないの?」
「……もう起きてる」

相変わらず目を細めたままだというのに、ぐっと腰を押し付けられて硬くなった所が薄い布を二枚挟んで私の太ももに刺さった。普段は仏頂面で無口なくせに、下品なジョークは寝起きでスラスラ言えるなんて呆れる。

「これが邪魔だ」

暗に脱がせとでも言いたげに私の手は唯一身に付けていたボクサーパンツに導かれていった。ダリルの手はダリルの手で、私の尻をむき出しにしてショーツをぐいぐいと下に引きずり下ろす。
意地なんか張っても仕方ないし。素直にウエストのゴムから手を差し込んで撫でるように押し下げると、手前側では元気に膨れたそれがぷるんと揺れた。

「おはよう」

挨拶をして再びキスを交わす。
背中を腰を伝って背中に這うダリルの指先にぞくぞくしているうちにギュッと抱きしめられ、ついに太ももの隙間に熱い塊が侵入してきた。
腰を動かされるたびに体液が塗り広げられていくのがわかる。私のものかダリルのものかはわからないけど、どちらにしても興奮材料になるのは変わりない。

「くすぐったい」

先端が敏感な場所に触れると変な声が出てしまう。
ぬるぬると太ももでダリルのものを挟み込んでいるうちに、無意識に足に力が入って締め付けようとしていた。足だけならまだしも子宮の方まで疼いて、焦らされているような動きがもどかしくなってくる。

「んっ、ダリル、ここ」
「んん、待てよ」
「……やだ、っ」

まだもどかしいのを楽しんでいたいダリルを無視して、先端を入り口に突き立てる角度になるように誘導してみた。このまま挿れてもいいけれど、挿れた所でまたもどかしくなるに決まっている。
鎖骨のあたりに頭突きすると、油断していたダリルはすぐに仰向けに転がった。マウントポジションを取ればあっという間に私が優位に立つ。

「ふふ、」
「なに笑ってるのよ」
「いや、もっとこっち来いよ」

腰を引き寄せられてダリルの上に着地する。
ちょうど熱い所が重なったから不慣れながらも前後に腰を揺らして準備をした。下側でぴくりと首を擡もたげたのを逃さず掬いとるように少しずつ中に埋めていく。

「ん、ダリル」
「はは、上手い」
「……っん」

余裕な態度で私を褒めるダリルに少しムッとする。うっすら開いた瞼の隙間からは、楽しそうに私を見上げるダリルが見えた。
絶対このまま終わらせる。
私の中に謎の闘争心が芽生え、得意でもないのに我ながらよくもこんなに動けるなというほどスムーズな腰遣いができた。私が下の時よりもずっと奥までゴリゴリと抉るそれは、まるで凶器のようだというのに、私に主導権があるというだけで弱点を咥えこんだ気になる。
右手をダリルの左手に絡め取られ、指を交差して握った。

「んっ、ふ、あっあっ」
「ああ、ナマエ、ここだろ?」
「そう、そこ、っあ、は」

私より先にダリルをイかせたい……
なんて思っていたのはいつまでだったろうか。気がつけばダリルが私のいい所を突き上げるように腰を浮かせ、私は快楽を貪るように夢中で腰を揺すっていた。

「イきそ、っは」
「ん、こっち向いて」

何度肌を重ねても絶頂の瞬間はやはり少し恥ずかしくて、視線を感じながらもぎゅっと瞼を閉じた。私の腰の動きに合わせてダリルが突いてくるせいで、どんなに恥ずかしくたって逆らえない。
ピピッ

「えっ」

聞き覚えのある電子音が聞こえた次の瞬間、デジカメ特有の軽いシャッター音が響く。
驚いて目を見張ると、ダリルの手にはさっきまでサイドテーブルにあったはずのデジタルカメラが握られていた。今すぐ奪い取ってやりたいのに、利き手は塞がれてるし、腰は相変わらず突き上げられるしで、そんな意思はどんどん薄弱になっていってしまう。

「やっ、ダリル、ちょっとな、に撮ってるの」
「っん、は、好きなもの撮って何が悪い」
「勝手に」
「勝手に俺の写真何枚撮った?」
「ばか、ずるい、っや、あっあっ」

気持ちが萎えてしまうかと思いきや、まったくそんなことはない事実に一番驚いているのは私だ。
ピピッ、パシャ、ピピッ、パシャ
と、ピントを合わせる音とシャッターを切る音が交互に聞こえ、合間にダリルがカメラマンのようにごちゃごちゃ言ってくる。
なんだか馬鹿みたいに思うけど、それが呪文みたいにじわじわと効いて、撮られることなんて気にしないどころかどうせ撮るなら綺麗に撮ってとすら感じつつあった。

「いいね、」
「よくない、っ、は、は、撮りすぎ」
「新しいショットをくれ」
「ばか」

ストラップを腕に引っ掛けたダリルは私の腰を両手で掴み、緩やかに前後に揺らす。
先端が一番奥の所で円を描いて、力任せなようで確実に絶頂の淵に導かれつつあった。

「ちょ、だめ、本当に」
「もうちょっと」
「あ、あっ、ダリ、ル……っ」

ゆったりしたペースで揺り動かされていたのが徐々に速度を増し、限界はもうすぐそこまで来ている。
最後にふっと引き抜かれたそれをガツンと打ち付けられるや否や、甲高く呻いた私はシャッターの音を聞きながら全身の力が抜けていくのを感じた。

「っあ!」

呼吸を整える間もなく視界がぐるりと回転し、真っ白な天井が目に入る。今度は私がダリルに沈められてしまったようだ。
器用にもそこは繋がりっぱなしのままで、相変わらずの硬度を保つもののおかげでダリルに負けたことを悟ってしまった。
くやしい。

「こっちの方が落ち着くな」
「そう?」
「触れる面積は多いほうがいいだろ」
「っん、」

時々こうやって甘えたことを言う。こんなことしてる時に言うのは反則だと思う。
……もう私の負けでいいや、って、すぐに諦めがつくけど。
ダリルの大きな背中に腕をまわして啄むようなキスを繰り返しながら突かれるのが、どんな気持ちいいことより一番しあわせだと思う。

「ダリル、好き」

返事の代わりのキスを貰う。
さっきまでダリルが寝ていたシーツの上は暖かくて、前後からダリルに抱かれているような気になる。
私の良いところを捉えながらも自分自身を昂らせていくダリルの顔はとてもセクシーだ。中を締め付けると少し苦しそうな顔をする。
なんだかそれがおかしくて愛しくて、そんなことをしているうちに私もまた同じく快楽に溺れていくのだ。

「ふ、あっ、ダリル、ダリル、」
「ナマエ、っ」
「あ、あ、イっ、く」

抜き差しが激しくなって水音も下品に響く頃、私は二度目の絶頂を果たした。
それに少し遅れてダリルのものが引き抜かれると、私のお腹にあたたかい液体がじんわりと広がっていった。

「はあ、は、あ、ダリル」
「ん、ナマエ」

チュッと音を立てたキスを最後に、ダリルの体は私の上からゆっくりと離れていってしまう。好き放題いつでもできるはずなのになんでこの瞬間はいつも寂しいんだろう。
物思いにふける私にダリルがニヤニヤと笑いかけた。

「どうしたの?」
「最高」

ピピッ、カシャ

「馬鹿」

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