DEAR 03|花

ナマエは「なにもないよ」ってゆってたけど、絶対にウソだと思う。俺のこと子供だと思って隠してるなら、なんかむかつく。
「ねー、三蔵なんか知らない?」
「知るか。……気のせいじゃないのか」
「えー!? 気のせいだと思う!?」

三蔵もウソつくのかよ!
みんなして隠してるならもっとむかつく!
絶対に俺の勘違いなんかじゃないって。八戒は「本人に聞きなさい」とか言うし、悟浄は全然気づいてないし、俺みたいに心配してるやつがいないのも絶対におかしい。悟浄は鈍いからともかく、俺が気づくことに八戒が気づかないわけないじゃん。
ナマエになにかあったら力になりたいって思うよ。みんなは違うのかな?

「あんまり人の事情に首突っ込むんじゃねえよ」
「あー! 三蔵だっておかしいって思ってんじゃん! おかしいよな!? 前はあんな顔しなかっただろ? ナマエはどうして悲しい顔するの?」
「……はー」

三蔵はようやく観念したように新聞を置くと俺を隣に呼んで座らせた。あ、これ説教のやつだ、と思ったけど、その口調は意外にも優しかった。

「人には言いたくねえことのひとつやふたつあるもんだ。あいつも今は言いたくねえってだけでそのうち勝手に解決するかも知れない。あいつがひとりで抱えきれなくなった時にそばにいてやれれば良いって事もあるだろ」
「……」
「大体お前に解決できないことだったらどうするんだ? ナマエを余計に苦しませることになるんじゃないのか」
「……そうかも知んない」

なんでも聞けば良いってもんじゃないか……
できればナマエの困った顔なんか見たくないし、困らせたり悲しませたりする原因があるならすぐに無くしてあげたいけど。それがいつも正しいわけじゃないんだ。
俺ができることってなんだろう?

「ちょっとでかけてくる!」
「迷惑かけんなよ」
「わかってるよ!」

宿の裏の林の中に、小さな池があった。池の畔にはたしかいくつか花が咲いていたはずだ。ナマエに似合う白い花を詰んで、輪っかに束ねると小さな花冠ができた。
俺達がそばにいるよ、って、伝えられたらいいな。

「ナマエ!」
「悟空、どうしたの?」

ナマエたちの部屋に行ったら、ひとりで本を読んでいた。八戒や悟浄がいたら気を使うかもしれなかったし、ちょうど良かった。
俺が花冠を差し出すと、ナマエは少し戸惑ったようにそれを受け取る。せっかく作ったのに手元にぶら下げておくんじゃもったいないから、ちょっと強引に腕を引いて花冠を頭に乗せた。

「ナマエ、最近元気ないから、お見舞い!」
「えっ!? あ、ごめんね、その、手術のあとが痛くて…… 大したことないのに隠してごめんね、ありがとう」
「ここ、痛いのか?」

そっと手を伸ばして髪をよけると痛々しい手術痕が赤く腫れている。耳の下の流れ星は、半分に割れていた。
俺にこれを治してやることはできない。やっぱり三蔵の言う通りだった。

「俺、なんにもできなくてごめん」
「やだなー、これくれたじゃん、嬉しいよ」
「へへ、それならよかった! あのさ、俺たちじゃなんにもできないかもしれないけど、そばにいるからな!」
「ありがとう、悟空」
「じゃあな!」

笑ってくれてよかった。
ナマエがいると、三蔵も八戒も悟浄もみんな、なんか機嫌が良い気がする。もちろん俺はナマエがいてくれたら嬉しい。
できたら、ずっとずっと、みんな一緒に暮らしていけたらいいのに。
無理ってわかってるけど。
ナマエの笑顔を見ると、ちょっとくらい夢見てもいいかなー、なんて思う。

タイトルとURLをコピーしました