「わあ」
思わずドラマみたいな反応をしてしまった。
久々にやる気が出たので家中を片付けていた所、ボロボロのスケッチブックを見つけたのだ。私は絵なんか描かないし、ともすればこれはダリルのものである。悪いなあとは(少しだけ)思ったものの、ほとんど迷わず開いてしまった私の反応が「わあ」だった。
「絵描くなんて知らなかった……」
コミックアートみたいな絵から写真を切り取ったような絵までいろんなタッチの絵が並ぶ。こんなのいつ描いていたんだろう。相当黄ばんでいるし、多分スケッチブック自体はなかなか古いものだ。
日付のようなメモが無いか見ながら次々とページをめくった。圧倒的に生き物の絵が多い。ああ、動物好きだもんね。
そういえば肉を食べる時はいつもより念入りに祈るし、骨以外はまったく残さない。単なるものすごい肉好きかと思っていたけど、多分それだけではない感情があるのだろう。
私はダリルのそういう彼独自の細やかな世界が好きになったことを思い出した。植物の絵もたくさんあって、その多くが可憐な花なのもダリルらしい。
あんな見てくれをしているくせに(隠しているけど)実は可愛いものに目がない所も好きだ。
「……さすがにこれ飾ったら怒るかな?」
スケッチブックを開いて壁に立て掛けてみると、それだけで素敵なインテリアなんだけど。スケッチブック自体に雰囲気があるし、ダリルの絵がその雰囲気にとてもよく合う。
「駄目だな」
多分怒られるだろう。
シミュレートした私の脳内のダリルは、勝手に見るな触るなと怒って、どうせ飾るならちゃんと描きたかったどうのこうのとブツブツ文句を言っていた。素敵な絵なのにしまい込んでしまうなんてもったいないのに。
「……えっ」
ぱらりと最後のページをめくると、思いもよらぬ絵を見つけて心臓が止まるかと思った。
どう見ても私だ。
しかも髪の長さからして、付き合う前のモヤモヤしていた時期の私だ。
「……」
思わずにやりと変な笑みがこぼれてしまう。
私がここに押しかけてこなきゃどうにかなる気があったかも怪しかったくせに、ひとりでこんな絵を描いてるなんて、それってつまり。
本物の私より少し美人すぎる気もするけれど、ダリルにはこう見えているのだとすれば、それはまさしく恋である。今更こんなものを見つけてしまうとは。
「……困ったな」
これが欲しい。
欲しいけど、
……どうしようかな。
本人に断ったら破り捨てられかねないし、勝手に飾るなんて最悪なパターンだし。 ……こっそり私の引き出しにしまってしまおうか。
スケッチブックがしまわれていた(というか落ちていた)場所をもう一度確認すると、最近はめっきりいじらなくなった廃材の山の隙間だった。本人もこんな所にしまってある(落ちてる)とは思っていないのでは。
絶対そうだ、そうに違いない。
「よし、もらおう」
明らかに悪い顔をして笑うと、玄関からガタガタと音が聞こえて、それに続いて「帰った」といつものぶっきらぼうなダリルの声がした。
慌てて数年越しのラブレターを引き出しに入れた。