羽鳥は無自覚

これで13回目だよ?
あ、13ってなんかちょっと不吉で面白いね。え? ああ、そうそう、13回ってのは俺がナマエちゃんに告白された回数。毎回毎回ストレートに「好きです」ってひねりもなく言われてるんだけど。恋してますー、みたいな顔してすごくかわいいよ。
ちょっと待って、かわいければ誰でもいいなんて思ってないよ。俺のことなんだと思ってるの、傷つくなー。

わかってると思うけどナマエちゃんはがんばりやさんだし、いい子だと思うし、女の子としてすごく魅力的でしょ?
だからこそゲームにしちゃうのは心が痛むっていうか。俺が負けるのも嫌だけど、ナマエちゃんが負けるのも嫌でしょ。いや、俺にだって良心くらいあるよ。ずっと笑っててほしいし、傷つく所なんか見たくないんだよね。傷つけるつもりなんかなくたって、結果的にナマエちゃんが傷ついちゃったら俺のせいだし。それは嫌かな。

立場も立場だしね。いくらナンパしたのが先とは言え、取引先の社員ってのはちょっと。いくらなんでもそこまで自制できない男じゃないよ。相手には困ってないしさ。
あ、ほら、また最低とか言う。そういうふうに見えるんでしょ、外から見たらやっぱり。それなら尚更ナマエちゃんと付き合うわけにはいかないよ。

うん。デートもしてない。あ、取引先に勤めてたってのを知るまではしたけど。3回くらいかな、多分。……意外と下衆な事考えるね。エッチ。ふふ、ホテルは行ってないって。
まあでも仕事上二人きりになることはあるし、それは避けられないからなあ。流れで食事に行くことくらいはね。

その時もすごくかわいいよ。恋する女の子ってなんであんなにかわいいんだろうね。応援したくなるよね。相手は俺だから応援できないんだけど。
早く諦めて君にぴったりのいい男探してね、って言っても聞かないんだ。俺がいいって言うの。かわいいよね。

て言っても、あと1ヶ月で一旦契約終了しちゃうから、それまでなんだろうな。そしたらきっとナマエちゃんも俺のことなんか忘れるんじゃないかな。ていうか、そうしてくれないと困るでしょ。いい男見つけてもらわないと。
俺より美形で背も高くて、できればお金もあるといいよね。俺なんかあっという間に霞んじゃうようなさ。王子様みたいなさ。そういう男に出会えばいいのに。

…………どうしよ。俺、あと1ヶ月でナマエちゃんに会わなくても平気な顔していられるかな。

「それが本音でしょ、随分ダラダラと長ったらしく言い訳したけど」
「違うはずなんだけどなあ」

時々「女の敵」「最低」と突っ込みを入れながらもなんだかんだと俺の話を一通り聞いた神楽は深々ため息をついた。

「あの子は本当に本気で男見る目なくて超かわいそうだと思うけど」
「本当だよね」

俺もそう思うもん。なんで俺のことなんか。馬鹿だなあ。馬鹿な子ほどかわいいって誰が言ったんだろう。
グラスの中の氷が溶けてカランと音を鳴らす。映画みたいなシーンに思わず笑ってしまったら、神楽が俺を睨みつけてからまたため息をついて視線を逸した。

「僕は、そういう子が羽鳥に似合うと思うよ」

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