羽鳥と乱闘してRevelに見守られる

「本っっっ当クソ野郎!最低! バカ! ハゲ!!!!」
「ちょっ、と、ハゲはやめて」

羽鳥はずるい。いつもこっちを試すような言葉ばかり使って、自分は本心なんか言わない。というか、本心を言っていたとしても嘘だって事にする。そうやってすぐに逃げて、私と向き合おうとしない。

「もういい、合コン行くからいい、二度とあんたとデートなんかしない」
「デートって思ってくれてたんだ、嬉しいな」
「っ顔も見たくない!!」

そのへんにあったコースターやらおしぼりやらを手当たり次第に投げつけると、羽鳥はまた半笑いでヘラヘラとそれを受け止めた。
何が「デートって思ってくれてたんだ」だ。自分で「デートしよう」って言ったんじゃないか。「かわいい」って言ったのも「他の男の所なんか行かないで」って言ったのも、全部羽鳥のくせに。

「アハハ、傑作、いい気味」
「こら、亜貴! ちょっとナマエそのくらいにして……」

精神状態がぐっちゃぐちゃの私とおしぼりを被った羽鳥を見た亜貴ちゃんが見下すように笑い、慶ちゃんはそれを制止するばかりか私を遮るように立つ。
慶ちゃんを困らせたいわけではないけれど、手負いの獣状態の私はそれが少しだけ不愉快で、押しのけるように腕を押す。それなのにびくともしない。大して私と体格も変わらないのに、やっぱり男の人だった。

「慶ちゃんどいて」
「どかないよ」

慶ちゃんの肩越しに見える羽鳥が一番困った顔をしていて、なおのこと腹が立つ。一番困ってるのも一番泣きたいのも私なのに。全部の責任から逃げて被害者づらしようだなんていい度胸している。
壁のように立ちはだかる慶ちゃんをどかそうとにらみつけると、なんと優しい顔をしているだろうか。羽鳥とは大違いだ。羽鳥とは違う。羽鳥なんか大嫌いだ。

「ナマエ……」
「あーあ、羽鳥のせいだよ」

頬を流れる水分はどう考えても私の涙で、いよいよ愚の骨頂感が増してきた。いくらなんでもみんなの前で泣くなんて。いい歳した大人なのに。そんなつもりじゃなかったのに。それもこれも全部羽鳥のせいだけど。

「帰る」
「な、ちょっ、ナマエ待って」

私を追いかけてくれるのはやっぱり慶ちゃんで、慶ちゃんだけは私に優しくて、慶ちゃんが優しくするから泣いてしまったんだ。
慶ちゃんは強く引き止めてハンカチを握らせてきたから、いろいろと限界だった私はもはや自立すらできなくなってすがるように抱きついた。

「慶ちゃんの馬鹿ぁぁぁ」
「えっ俺…… ごめん」
「男に遊ばれた! 羽鳥に!!! もう慶ちゃんにする。慶ちゃん付き合って」
「いや、それはまあ、今する話じゃないだろ」

そうは言いつつもきちんと私の腰を支えてくれるし、涙だって拭いてくれるし、慶ちゃんの半分、いや、慶ちゃんそのものが優しさでできている。羽鳥は慶ちゃんの爪の垢を煎じて飲むべきだ。今すぐ。
慶ちゃんの胸に顔を押し付けてえぐえぐと声にならない声で泣いていると、突然視界が明るくなって慶ちゃんの顔が離れていった。

「ごめん、やっぱり他の男の所なんか行ってほしくない」
「な」

慶ちゃんとの間を遮るように羽鳥の腕があって、図々しくも抱き寄せるかのように私の頭は羽鳥の胸元に預けられている。驚いて涙も引っ込んだ。慶ちゃんも驚いているし、なんなら亜貴ちゃんが一番驚いている。

「俺のものになって」
「え……」
「……もう遅い?」

羽鳥の公開告白とも取れるような発言に、その場の誰もが言葉を失っていた。あれだけ待ち望んでいたにも関わらず私ですら言葉が出ない。
思わず慶ちゃんを見つめると、目が合った慶ちゃんはいつもみたいに優しく微笑んでくれた。
なにか言わなきゃ。よし。そう決意した所で入店のベルが鳴って桧山くんが姿を見せる。桧山くんはぐるっとひと回り状況を確認してから小首をかしげてしまう。そりゃそうだ。

「ああ、羽鳥がナマエに告白したとこ」
「そうか。で、付き合うのか?」

桧山くんは私を抱きしめている羽鳥と私の顔を交互に見てから、あろうことか私に向かってそう訊いたのだ。神の使いかと思うような美しい造形の顔立ちに見つめられてしまえば、どんな取り繕いも無駄なものに思えて、詰まった言葉が素直にこぼれ落ちた。

「付き合う」

そう答えるやいなや、公開告白どころか公開キスまで晒してしまう羽目になった。
ほんと、もう、羽鳥なんか大嫌いだ。

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