京介くんの非日常

上品な手触りの白い紙には箔押しで金色の鳩が2羽あしらわれていた。シンプルなデザインの招待状から、彼らが着実に歩んできた長い年月の重みを感じられるようで、なんというか、単純に「いいな」と思う。
微笑ましく感じつつも申し訳なく思いながら『ご』と『ご出席』の上から二重線を引いて『欠席』に丸をつけた。

まともに通えてもいない高校生活の中、貴重な“高校生”の思い出が作れたのは彼がよく俺のことを気にかけてくれたからだと思う。
高校時代の数少ない友人の一人だったから本当は出席したいけど、どうしてもスケジュールの都合がつかない。スマホのスケジュールアプリを見ながら時間単位で組まれている現場を見てため息をついた。

いやー、本当、次のまともな休みっていつだろうな。画面をタップしている途中、マネージャーからLIMEで先日撮影した雑誌グラビアのサンプルが届く。いつも綺麗に撮ってくれるスタッフやカメラマンさんには頭が下がるよね。
あ、と打つとすぐに予測変換で出てくる「ありがとう」をタップして、すぐに返信した。
送られてきた画像を保存するついでにカメラロールの画像も見ていると、今までの仕事の写真も決して少なくない数が保存されている。こんな仕事もしたなあって懐かしい気持ちでスワイプしていると、ナマエちゃんがマグカップをふたつ持って隣に座った。

「ありがとう」
「いえいえ。いつもお疲れさま」
「本当ごめんね、いつもこんなデートしかできなくて」
「そんなことない! 仕事してる京介くんも好きだよ。無理はしてほしくないけど……」

優しい言葉。気遣った素振りもなく自然にこういう言葉が出てくる彼女と一緒にいると、君が居てくれてよかったと心から思う。
体調を気遣ってか、俺を見る彼女は心配そうに眉尻を下げた。

「大丈夫だから安心してて。体調管理と健康管理には気配りしてるし、何かあったらちゃんとマネージャーにもちゃんと言うから。ね?」
「あ、ごめんね。わかってるんだけど心配になっちゃって。いつも頑張ってるだけに。でも頑張らなくていいよとは言いたくないからなー。上手に応援するのって難しいなあ」

紅茶を冷ますようにふーっと息を吹きかける真剣な横顔がとても綺麗だった。綺麗だし、かわいいし、なんだろう。愛しいってこういうことなのかも知れない。

「んー、俺はナマエちゃんとこういう時間があるだけで幸せ」
「えっ」

現場と移動でほとんどの時間を過ごすのは高校時代から変わらない。思い返せば俺にとっての日常って『=仕事』なんだよね。ずっとそう。もう何年になるだろう。仕事は嫌いじゃないしむしろ好きだし、みんなの笑顔を見ると俺も元気を分けてもらえる。
だけどこうして君の隣でふやけたようになんでもない時間を過ごすのも大好き。
残念ながら、今はまだこれを“日常”と呼べるほど自由な時間が無いんだけど。

「はあ」
「やだやだ、嬉しいこと言ったあとにため息とか怖い!」
「あはは、ごめんね。怖いことは考えてないって!」
「本当?」
「本当。君が好きって思っただけ」
「えっ。……それは、それで…… 恥ずかしいけど」

照れた顔も好きだよ。
きっと素直に伝えたら君は照れて顔を隠しちゃうから、言わないでおくね。
いつか君に「おかえり」って言ってもらえる日を楽しみにしてる。

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