誠さんとデートしたい

ああ、もうこんな季節なんだ。ニュースでもCMでもイルミネーションのことを取り上げている。ソファに寄りかかってテレビを見ていたら、キラキラした街並みと慌ただしく歩く人のギャップが少し面白かった。
誠さんと一緒に過ごすようになってから外を出歩くことが激減し、季節の移ろいを感じる機会もだいぶ少なくなってしまった。ほとんどがテレビやSNSだなあなんて思いつつ、たった今放送していたイルミネーションをスマホで調べる。

「うわ」

やっぱり綺麗。とはいえ、わざわざ見に行くほどのものでもないということは、もうよーくわかっているお年頃なのは確かだ。
一人で行くのもなんだか違うし、かと言って誠さんはどちらかといえば苦手だろうな。これだけ人混みなんだもの。広告サイトでは人なんか映っていないけど、テレビやSNSでバッチリガッツリ映り込んだ人影がそれを証明している。
……本当は一緒に行けたら嬉しいけど。でもな。苦手だと思われる場所にわざわざ誘うのも遠慮してしまうし、メインがイルミネーションというのはな。でもショッピングといったって。うーん。

どうにか誠さんとイルミネーションを通るプランを考えてみるものの、最重要項目である『人混みを歩かない』という条件がどうしてもクリアできそうにない。
それはそうだよね、シーズンものだし、定番デートスポットだし。そもそも電車に乗らなきゃいけないことからしてハードルが高いかも知れない。
冷静に考えてみればたかが電飾だ。諦めようかな。ああだこうだと考えていると、休憩に入ったらしい誠さんが執筆を終えて私の隣に腰をかけた。
誠さんはチラリと私の手元に視線を落とし、すぐに前を向いてテレビを眺める。テレビでは相変わらず賑わう街並みとイルミネーションをバックに、天気予報が流れていた。明日は晴れるらしい。

「見に行くか、買い物でもしつつになるだろうが」
「えっ」

特別変わった様子もなく、いつも通りの誠さんはテレビをまっすぐ見据えてぼんやりとなにか考えているようだった。
……ああ、取材か。
そこでようやく誠さんが人混みに突撃する理由を思い出して納得した。クリスマスシーズンというにはやや早い今のうちに取材しておけば、新聞の連載には間に合う。そういえば誠さんのお気に入りのマグカップが欠けてしまったから、新しいものを買いに行きたい。

「細かい場所の指定とかある? 服装とかも指示があればそれにするけど」

誠さんが取材の時は、できるだけ私も役に立てるように協力するようにしている。この服装では寒いとか暑いとか、隣を歩くとこんなことが気になるとか、そういう些細なことがなにかのヒントになることもあるらしい。
今回もそういう話だと思ってそう問いかけると、誠さんは言葉の意味をまるで理解していないような呆けた顔で私を見た。

「……取材じゃないの?」
「男が女を誘ったらデートに決まっているだろう」

胸の奥からこみ上げる熱いものが耳まで染めたのがわかった。
驚くとかそういう次元じゃない。人混みは辛いとかプライベートで出歩きたくないとか、あらゆる不都合を越えてまで私とデートしたいなんて思うことがあるんだ。
愛されている自覚がなかったわけではないけど、まさか誠さんからそんなことを言い出すなんて思ってもいなかったから。

「デート、してくれるか?」

返事に詰まった私を見て事態を把握したらしい誠さんは笑いながら改めてそう誘い、私は声も出せないままただ頷いたのだ。

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