メルル|カルマ

※夢主既に死んでます、悲しいお話、夢というかただの二次創作メルルの独白です、苦手な方注意

「戻る場所なんかない」

そう突き放してミショーンを車から下ろした。最初からこうしていれば良かったのかもしれない。似合わないことはするものじゃないと、ようやく身に染みた。
とにかく生きるのに必死でクソ野郎の言いなりになって自分を見失っていた。その上、弟の居場所まで奪うことになろうとしている。
全部結局は俺のせいだ。
俺はクソ野郎だ。

「そんなことできないくせに」

まだナマエと一緒に住む前、無理矢理犯して俺の女にしようとした時にそう言われた。
前開きのシャツのボタンを引きちぎられてボロボロの姿をしたナマエは、泣きそうに笑って俺を引き寄せて抱いた。

「優しいメルルが大好き」

あの時の声が今でも耳にこびりついて離れない。
初めてキスをしたあとの笑顔を見て、一生守ると決めた。大事なものができたら強くなって守らなきゃならないということを知っていたのは、奇しくも頭のおかしい両親のおかげだった。
それなのに、俺はナマエを守ることすらできない馬鹿だった。

「メルル、ここ」
「この程度でよかった、手当するからじっとしてろよ」
「ん、痛くしないでね」

あの時クソどもに引っ掻かれた手を切り落としてやれば、ナマエはまだ俺の隣にいたかも知れない。
こんな手になっていても生きているだけマシだと、自分の右手を見るたびにナマエの傷のことを思い出して後悔した。
そもそも買い物に行くと言ったナマエについててやれば、引っ掻かれずに済んでいたに違いない。前日にサボらず仕事に行っていれば、街の事情を入手していたに違いない。
記憶を遡れば遡るほど後悔しかなかった。

「なんか変なの、ちょっと寝るね、おやすみメルル、愛してる 」

それが最後の言葉になるって、なぜわからなかった?
なぜ、愛していると返さなかった?
もしもナマエに言葉が届くなら、何度でも言うのに、今じゃもう遅い。最後に言った「おやすみ」は、永遠の別れを告げたわけじゃなかったはずなのに。
翌朝、人じゃなくなったナマエにとどめを刺した。
ナマエの前で初めて泣いた。動かなくなったナマエの前で一生分泣いた。
俺は本当に情けない男だ。
愛した女を守れもしないクソ野郎だ。
俺がクソ野郎だったせいでナマエは死んだ。
せめて安らかに眠って欲しくて、外が静まるのを待ってナマエが大事にしていた花壇の前に埋めた。
だから帰らなきゃならなかった。
今はクソどもから逃げ延びるので精一杯かも知れないが、それだっていずれ何らかの上手い対処が見つかるはずで、無我夢中で生き延びた暁には家に帰って、そしてようやくナマエの花壇の上で死ぬはずだった。

けど、今俺の脳裏に浮かぶのはあいつのベストに描かれた天使の翼と、背中に彫られたデーモンのタトゥーだった。
弟の居場所を守ったら、俺はもうナマエの上では死ねないだろう。十中八九俺の命に関わるが、そうなったら遠く離れた場所で眠るナマエに会えるかもわからない。
これは天罰だ。
まさかこんな所で命を天秤にかけられるとは、神こそ悪魔ではないかと思う。

「ナマエ、悪いな、」

家には帰れそうにない。
これでチャラになるとは言わないが、せめてあの世で愛してると言えるくらいの償いにはならないものだろうか。最後の晩餐はまずい酒だ。
モーターヘッドの曲の歌詞に自分を重ねて笑った。

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