今日は帰りが遅いと心配していたら、連絡もなしに午前様でダリルに担がれて帰宅した。
どう見ても酔っぱらいのそれで、白い肌が真っ赤になっている。寝てるか起きてるかもよくわからない。
「大分酔ってるから適当に転がしとくぜ」
「ありがとうダリル、いつもごめんなさい」
「お前は気にすんなよ、じゃあな」
お酒には強いはずだけど、時々こうして泥酔して帰ってくる。ダリルいわく酒を酒で割って飲んでるらしいから、相当無茶な飲み方をしているのだろう。
そしてこういう日は大体仕事で嫌なことがあった日である。
機嫌が悪いのはダリル相手に発散しまくっているようなので(申し訳ないが)大した問題じゃない。
「ダリルー、おい、ダリル」
「ダリルは帰ったよ」
「んー、ここは家か?」
「そうだよ」
「んだよ、チッ、飲み足りねえよクソが」
ソファから起き上がることもなく、それどころか身動きひとつせずソファに仰向けのまま寝言のように悪態をついている。
飲み足りないわけがないけど、暴れると面倒くさいので空になったジンの瓶に水を入れてこよう。
「ハニー、いるんだろ、こっち来いよ」
「ちょっと待って」
「なあハニー、ナマエ、ナマエ……」
もう少し待って、と何度も声を掛けているのに私を呼ぶ声は止まない。
あれだけ泥酔していれば 私がメルルの所に行ったからといってどうにかなるものでもないというのに。だんだんヒナが親鳥を求めているような感じがして、つい顔が綻ぶ。
空き瓶に半分くらい水を貯めてメルルの所に戻ると、メルルは何一つ変わらず死んだようにソファに横たわっていた。
「これ飲む?」
「ああ」
水とかジンとかは明確にしないで瓶を渡した。
メルルは目を閉じたまま瓶を持ってそれを口に運んだけれど、思いっきりこぼれまくってるし、滴った液体がソファに染みを作っている。本当に水にしてよかったと思う。
一緒に持ってきたタオルでびちょびちょの顔を拭いてあげると、酔っても衰えない力によって腕を引かれてすっぽりとその胸に収まった。
相当酒臭い。
何のお酒かはよくわからないけど、とにかく凄まじいアルコール臭だ。
「来たな」
「来るつもりはなかったけど」
メルルから香るアルコール臭だけで酔ってしまいそう。鼻をつまんだり突き飛ばしたりするわけにもいかず、おとなしく腕に収まっていると、耳の後ろでドクンドクンとメルルの心臓の音がする。
いつもより熱く汗ばむ肌にぴったりと密着して、アルコール臭は嫌なのにこうしているのはそんなに悪くない。
「寂しいこと言うなって」
「ちょっと」
メルルの腕が胸に伸びて、服の上から豪快に揉みしだかれた。Tシャツ1枚ごしに指先の感覚がダイレクトに伝わる。
別に感じてるわけじゃないのに、だんだん乳首が硬くなるのが恥ずかしい。
「あー、早く帰ってくればよかった」
「それ毎回言ってるよ」
「こっち向けよ」
言われるがままにメルルの上に馬乗りになると、すぐに裾から両腕が潜り込んでTシャツをさらう。
こういう雰囲気になると元気が出てくるってのはある意味男の鑑だろうか。外ではてこでも動かないくらいその場で飲んだくれているくせに。
メルルに引き寄せられて、熱い顔が胸に埋まる。感触を確かめるように両脇から胸の肉を寄せてスリスリと鼻を擦り付けてくるメルルは、まるで子供のようだった。
経歴や見た目からは想像もつかない甘えように、最初はとても戸惑ったのを思い出す。
「メルル、ベッドで寝ようね」
「まだ寝るのは早いだろ?」
「大概夜更けですけど」
「そういうこと言ってるんじゃない」
胸元のメルルに気を取られていたけど、いつの間にかメルルのボトムのファスナーは全開になっていてあとはそれを下ろせばいつでも臨戦態勢と言わんばかりだった。大きな子供に駄々をこねられるのは意外と嫌いじゃない。そんなことメルルと付き合って初めて知った。
メルルは相変わらず私の胸のあたりでスンスンと鼻を鳴らし、私の匂いを嗅いでいる。
恥ずかしいけどさっきお風呂入ったから平気なはずだ。多分。
「クソ、なんだよ」
急に正気に戻ったみたいな声を出したメルルが、私を抱きしめたまま起き上がる。
少しばかりこのままセックスになだれ込むことを期待していた私はとんだ肩透かしを食らった気分。下から表情を覗き込むと、なんとも言えない複雑げな表情のメルルがいた。
ゆっくりと腕を解かれてその手はふたりが密着している股のあたりでもぞもぞと動く。
「どうしたの?」
「どうしたもこうしたもねえよ」
「え?」
「はー、」
随分落ち込んだ様子で顔を覆ったかと思えば、次の瞬間には私を再び抱きしめて駄々をこねるようにぐりぐりと顔を擦りつけ始めた。
一体なんだというのだ。でも、なんだか今日は一段と甘えん坊な感じがして、ちょっとかわいい。
えぐるように当てられる頭を撫でてあげると、メルルが情けない声で私の名前を呼んだ。
「ナマエとやりたい」
「いいよ」
「違う、できない」
「なんで?」
「聞くなよ、情けない、俺は今猛烈に死にたい気分だよ」
思い当たる『できない原因』を考えて、やっと気がついた。
私の陰部にいつも当たるはずの猛々しく愛しいメルルのウィーニーがそこにいなかった。なるほど、それは酷いことを聞いてしまった。
「今すぐナマエにぶち込んでかわいい声が聞きたい」
「いつでもできるよ」
「違う、俺は今ムラムラしてるんだ、ナマエの中に出したい」
「今度はお酒飲みすぎないでね」
「ナマエ、愛してる、セックスしたい」
「また明日ね」
私にしがみついて無理を言うメルルは、本当に大きな子供そのもので、ママになったような気分になってくる。
なだめるように頭を撫でていると、次第にその口数は減ってがくんと肩に重みを感じた。
「メルル?」
「……」
「寝た?」
「……」
時計を見たらもう1時半になっていた。今日は朝早くから外に行っていたメルルは相当眠かったに違いない。
衝撃を与えないように頭を抱えてソファに寝かせ、ローテーブルの下にしまっておいたブランケットをかける。本当にいい加減な男だけど、今日は良いものが見れた。
少し後ろ髪をひかれながらもTシャツを着て、私はベッドで寝るとしよう。ひとりで寝るのは好きじゃないけど、今日はなんだかよく眠れそうな気がした。