毎日決まった時間に決まったように目が覚める。今日も例外ではなくそうして目覚めると、脇のあたりに違和感を覚えた。
寝ぼけ眼でそちらを見やれば、紅くてつぶらな瞳が僕を捉えて微笑んだ。
「八戒起きた」
「おはようございます」
昨夜の出来事を連想させるようにシーツからナマエの素肌が覗く。当然僕自身も何も身に着けておらず、ようやく素肌に触れるシーツとナマエの皮膚の感触を楽しむ余裕が出てきた。
向き合って背中を撫でつつ下降させていくと、昨夜はなかったはずの布があるではないか。隙間から指をねじ込めば「もう」と可愛い声がする。
「なんで着ちゃったんですか」
「なんでって」
「朝一番でしたいと思いませんか」
「っん、」
我慢できずに返事を聞く前に唇を塞いだ。ついばむように思う存分その感触を楽しんでから離す。朝からこんな蕩けた顔をしてしまうなんて、やはりこのまま起こしてやるわけにはいかない。
ゆっくりと彼女に覆いかぶさったその時、本当に本当に心底空気の読めないノックの音が響いた。
「おー、朝からお盛んか?」
デリカシーのない声の正体は一人しかあるまい。
しかもいきなり扉を開けてこないあたり、その可能性が限りなく100%に近い事を知っているのだ。それでもこうして起こしてくる。久々に団体行動を面倒くさいと感じてしまった。
「わかってるなら帰って下さい」
「な、は、八戒」
「朝飯食ってそのまま出発って話だっただろーが、あと10分だって三蔵様がお怒りだぞー、じゃあな」
僕の不機嫌な声に反するように軽い調子の返事が聞こえ、そのまま足音が遠ざかる。ああ、そういえばそうだ。今日の出発は早いという話だった。
ちらりと胸元を見ると困った顔のナマエが首をかしげていて、その可愛い生き物にキスをすれば抱きついて頬を擦り付けてくる。
これをみすみす見逃せだなんて無情にも程があるのでは。
「八戒、好き」
少しでも挿れたら駄目だろうか。
……駄目だな。ああ、駄目だけど。挿れたい。
起き抜け早々から主張していたそれをナマエの太腿の間に挟むと、皮膚ではない何かに触れた。そうだ、下着を着けられていたんだった。
「……はぁ」
「なんかごめん」
「謝らないでください、僕があなたを好きすぎるばっかりに」
「えっ」
せめてあからさまに落ち込んで「したかった」アピールでもしておこう。これでナマエは次回僕の言いなりになるかもしれない。彼女は僕に甘いから。
困って照れている彼女にキスを落としてから起き上がる。今彼女の顔を見たら逆戻りしてしまいそうで、無理矢理にでも顔を逸らして脱ぎ捨てられたカットソーを被った。ついでに下着とパンツも履いてしまおう。
さっさと自分の分の衣類を身につけてナマエのものも拾う。これが例の“可愛くない下着”だろうか。いわゆる“下着”というよりは、丈の短いタンクトップに見えるけれど。こんなもの以前のナマエなら僕らの前で平気で晒しながら歩いていたのでは、と思った。
「ナマエ、起きて」
「んん」
未だにベッドに肢体を投げ出したままのナマエの腕を引いて起き上がらせ、頭から下着らしきそれを被せて胸下のゴム部分を整えてやる。
「は、八戒、恥ずかしい、ごめん」
「それを恥ずかしいと思うなら、もうそんな格好で悟浄の前を歩いたりしないでくださいね」
「しない!!」
「以前はしてましたからね?」
「すみません」
抱きしめながら立ち上がらせ、着替え終わるのを待つ間に自分の身だしなみも軽く整えた。その頃にはナマエの準備も終わっていて、荷物をまとめてようやく宿を後にしたのだった。
集合場所にしていたタバコ屋の前で仏頂面の三蔵と目が合い、わざとらしく微笑んでみれば呆れながら盛大にため息を吐かれた。
隣の悟空はいつも通り「おはよう」とは言うものの、何か言いたげな雰囲気が隠しきれていない。なるほど、悟浄か。
状況的に黙ってはいないと思ったけれど、果たしてどこまで、あるいは無いことまで話したことやら。考えるのも面倒くさくてその場でナマエの腰を抱く。
「八戒!?」
「遅くなってすみませんねえ」
「ハァー、さっさと行くぞ」
本日二度目の三蔵のため息と共に、全員でジープに乗り込む。皆が着席したのを確認して走り出せば、気持ちの良い風が頬を撫でた。
朝はすっかり邪魔されてしまったけれど、こうして5人で旅をするのは嫌いではない。
昨日とは確実に変化していく毎日を、なんということなく受け入れるし、受け入れられる。時間を共有する相手が彼らでよかったと、そう思うことは何度もあった。
そしてそれは、今日も例外ではない。
「今日は長旅ですから休憩多めで行きますよ」
「へいへい」