どうしたらこいつを縛り付けたまま生かしておけるかという事を考え出すと、どす黒い感情が全身を這い回って、吐き気がした。
「なに、どうしたの」
「別に」
短く、極めて不機嫌に返事をして寝返りを打った。背を向けて寝ると、ナマエはしばらくじっとしてからおれに貼り付いてきた。
いつものことだ。
ナマエから接触させるためにわざと寝返りを打っている。ナマエを手玉に取っていると言えば格好はつくが、実の所ただガキなだけだ。
年甲斐もなければ、今までのおれはどこへ行ってしまったんだと叱責すらしたくなるような
この繰り返しでおれは日々気分が悪くなった。
もう一度寝返りを打つと、その先に居たこの生き物のせいでこんな事になっているかと思うと、いくらどんな状況であったにせよ、こんな生き物拾うのではなかったと後悔した。
こいつを拾いさえしなければ、こいつに出会いさえしなければ、今のおれは今までのおれのままでいられただろう。
「チューして」
「うぜえからこっち来るな」
冷たく言い放つと、おれにひっついていたナマエは、はっと悲しい表情をしてから、それを隠すようにすぐにむっとした顔を作った。
ぱ、と腕を離しておれに背を向ける。
「もういいよ、ひとりで寝れば」
白い、細い、小さな肩。
ああ、おれに背なんか向けるな。
お前は、おれが何を言おうと、おれの側に居ろ。
抱きしめようとして、腕を引っ込めた。
馬鹿かおれは。たったひとりの小娘に、何を管理されようとしているのか。日に日にわからなくなっていくこの気分の悪い感情、を管理しきれない自分に腹が立って仕方がない。
それはまるでわめく子供のような、意味も理由もわからないその様相とよく似ていた。
本当はわかっている。認めてしまえば何もかも楽になるのだろうという事や、認めるのを畏れている自分がいる事を。
「クロコダイルの、ばか」
小さな肩が少し震えて、泣きそうな声がした。
「っ、あ」
「うるせえ」
ああ、最初に突っぱねるんじゃなかった。
最初に「おまえはおれの奴隷だ」と、言い放ったあの日から呪いがかけられてしまった。自分で自分に呪いをかけて、おれはこいつをどうしようとしていたのだろう。
塞いだ唇は柔らかく、すがりついてくる腕が心地よい。腕の中で満足そうに微笑むこれを、どうやって愛でよう。
どうしたら何が伝わるのか。
「クロコダイル」
「もうしない」
「するよ」
「しない」
「チューして!」
「……」
「チュー」
「……」
言われるがままに従うおれは、少し馬鹿になってしまったようだ。