Diamànte:時々

そろそろ死んだかな。
2,3日おきにそんなことばかり考えている。
彼からの連絡が気まぐれすぎることにはもう慣れたけど、いつ死ぬか考えると妙にソワソワしてしまう。

死因を考えるとゾクゾクする。
どうせろくな生き方していないのだから、地獄に落ちるような惨い死に方に決まってる。かつて拷問にかけた相手に刺し殺されたり、部下に毒盛られたりするのかな。復讐や裏切りで殺される彼を想像すると超笑える。
その死に方は彼にとって想定していた所で低確率な死に方だろうから。
それに、そんなに簡単に死ぬとは思えない。
“まさか”
という可能性に心が弾むだけだ。
与えられた高層階のだだっ広いワンルームは、たかが小娘の私には不釣り合いすぎる。くつろぎ方もわからない。
本当はこたつに転がって手の届く範囲にリモコンとティッシュと雑誌と携帯を置いて、スナック菓子を食べるような日常の方が好きだ。
それでも私は彼がいかにも愛人にしたがりそうな素直に高額な金になびく女を続ける。
だから、窓際に立って彼をここから突き落とすことを考えて笑うような過ごし方しか思いつかない。
この部屋で最期を迎えたら、私はどんな気持ちになるんだろう。
クローゼットにしまった無駄に大きな金庫の中には、どんどん札束が溜まっていった。

ピピッ
突然の電子音にハッとした。部屋のロックが解除される音だ。
この部屋のロックを勝手に解除して入ってくる人なんて1人しかいない。

「おい、いるか」

まさか連絡もなしに現れるとは思わなかった。
寝起きのまま顔すら洗っていない。髪もぐちゃぐちゃだし、ああ、着替えてもいない。彼好みの服装とはいえ昼間にベビードールはさすがにどうなのか。
咄嗟にベッドに潜り込んで、体調が悪いふりで誤魔化そうと息を潜めた。
私は今、久々に悪事が親にバレた時のような緊張感を味わっている。

「まだ寝てるのか」
「んー、体調悪くて、」
「ふーん……」

彼は私の容態には興味が無いらしい。
いや、私の嘘がばれているだけかも。

「ヒッ……!」

足元の方から布団に手を突っ込まれて、急に足首を掴まれたものだから思わず悲鳴が飛び出す。
心臓止まるかと思った。なんて危険なジジイなんだ。
そのままぐいぐいと引っ張られ、太ももまでも冷たい空気に晒された。
完全にばれている。

「体調が優れんというのに素足を丸出しにするとは感心できない」
「ご、ごめんなさい」

パシン!
という乾いた音と共に太ももに痛みが走った。
どんな顔をしているのか見るのが怖くて、布団から出られない。もぞもぞしているうちに、またパシンと太ももを打たれた。

「仕方のないやつだ」

叩いた所をいたわるように撫で始めたかと思いきや、その指先は徐々に太ももの付け根を目指し始めたのがわかった。
つつ、と、触れるか触れないかの狭間で指先が滑り、思わず足を閉じる。

「こら」
「!」

再びパシンと乾いた音とともに太ももに痛みが走った。
躾が始まったのだ。
反射的に閉じてしまった足をゆっくりと広げると、きっと赤くなっているだろう太ももを撫でられた。まるで褒めるかのような優しくて温かい手のひらが、私を揺さぶる。

「いい子だ」

少しでも閉じようとすると、また激しい叱責とビンタが飛んできた。
褒められたい、優しくされたい、撫でられたい
そんな自然な欲求に従っているだけなのに、私はこの人の前で足を大きくM字に開いてしまう。触ってください嬲ってくださいと言わんばかりの姿勢なのに、彼はとても優しく恥丘を撫でてくれた。

「待ちくたびれたか?」
「そんな、ことは」
「そうかのう」

わざとらしくとぼけた声を出して、ショーツの上から膣を抉る。突然触れられた足を閉じそうになったものの、なんとか堪えた。
ネチネチと捏ねくり回され、嫌でもわかった。したたった汁が中を汚して外側に染み出しているに違いない。きっと、私の体液が丸く跡を描いているはずだ。
ショーツの上から膣に侵入するつもりではないかと錯覚するほどぐりぐりと責められる一方で、クリトリスに触れる親指はとても優しい。
快感ともどかしさが二律背反して、気が狂いそう。気がつくと自ら指を求めるように腰を浮かせて押し付けてしまっていた。

「わしがいない間に何回した?」
「……に、2回」
「なっとらん、もっと励めと言っているだろ、……本当は?」
「毎日しました」
「その調子」

恥ずかしくて未だにとりあえず嘘をついてしまう。
彼は私が自慰するのを見るのが好きだ。見ていない所でもたくさんしろと言う。毎日しろと言うから、無理だよなんて笑っていたけど、彼に開発された私の体はその手を求めて止まなかった。
彼の手つきを真似て一人でしているうちに、寝る前にしなければ落ち着かないまでに変化していた。

「どれ」

ふと彼の手が離れてしまい、もどかしさがピークを迎える。
本心を言えばもうイきたいのだ。
歳のわりにつやがあっていつも手入れされているあの太い指で、めちゃくちゃにされたい。
離れた手が私の両腰に添えられたかと思うと、そこにあったショーツの紐をほどいた。サッと取り払われると、ひんやりとした空気が火照った性器を撫でる。
クリトリスが張っているのが自分でもわかった。

「おお、おお、元気で何より」
「あっ」

まさに具合を確かめるといったように、1本の指がクリトリスからお尻の方まで行き来する。行き来するたびに中から溢れる体液を塗り広げられて、次第にぴちゃぴちゃと水音を奏で始めた。

「さて」
「あっ、んん、ふ」

彼はセックスはしない。
もうできないのかもしれない。
どちらにせよ、今はこうやって私を弄んだり、私が自分で慰めたりするのを鑑賞する方が好きらしい。
ぬるりと指が挿入されて、一度大きくかき混ぜる。反対の手ではクリトリスの包皮を押し開いて、観察しているような気配を感じた。まるで触診だ。それはある種の事務的な行為でもあるというのに、興奮するのは何故なんだろう。
具合を確かめ終わった指は、次第に私を快楽に誘い始めた。

「あっ、あ、あ」
「くくく、」

しっかりとひだを開かれて、内壁を撫でるように指が抽挿を繰り返す。
布団を被っているせいで様子はまったくわからないけれど、きっといやらしい顔でそこを覗き込んでいるに違いない。
あのどこか虚ろで鋭い瞳がギラギラするのが見られないのは少し惜しい。
挿し込まれた指は的確に私の弱い所をとらえて、マッサージのようにぐりぐりと刺激を与えてくる。若い男みたいに力任せにはしたりしない。ゆったりした快楽のリズムが着実に絶頂まで運んでくれるのだ。
クリトリスも例外ではなく、2本の指で丁寧に扱かれて限界まで膨らんだ所を緩やかに弄ぶ。

「んっ、んん、っはあ」
「良いか?」
「気持ちいいです、ぅ、もっと」
「強欲な女だ」

私の望みに答えるように、彼の指先は速度を増した。びくん、と足が震えると、キュッと強めに刺激してくれる。
彼のセックス(ではないが)は私に寄り添ってくれる最高のセックスだと思う。
だけど時々、
彼の欲望に任せた激しいセックスをしてみたいと感じてしまう。
まさに今、とても切ない。

「ね、いきたい、」
「せっかちだのう」

ヒヒヒ、と独特な笑い声が聞こえた。
次の瞬間ぬるりとした感触がクリトリスを包み込んで、そこが彼の口の中に埋もれた事を悟る。

「ああっ、なんで、あっ、や」

ジュルジュルとわざと音を立てながらクリトリスを舐られる。
膣の中に埋められた指は器用に弱点を刺激し続け、久しぶりの舌の感覚と合わさって頭がおかしくなりそうだ。
彼は普段舐めたりなんかしない。大体は指だけで、時々おもちゃを使う。
最後に舐められたのはもう随分前だったから、完全に不意打ちだった。
どうして、気持ちいい、なんで、いきそう
疑問と快感が交差して混乱状態に陥る。
指と同じく粘着質な舌の動きは私のクリトリスをくるくると弄び、時折吸いつかれる感覚は子宮まで快感を突き刺してくるような凶悪さがあった。

「だめ、だめ、出ちゃう」

こんな所で出すなんて…… と躊躇する私の意識とは反対に、体は彼の与える快楽に素直だった。
中の指が膨らんだ所をリズミカルに刺激する。

「だめええ、あっ、ああああ」

指のリズムに合わせて、びゅーびゅーと潮を飛ばしてしまった。
こんなに漏らしてるのに指の動きは止まない。それどころか最後の一滴まで搾り取るようにぴったりと尿道に口をつけて啜られた。

「はっ、ああっ、は……」
「見事見事、もう1回いけるな」
「ひっ、あああ」

感度の高まった所に追い討ちをかけるように、中への刺激が再開する。今度は子宮口をコリコリとくすぐられ、さっきとは違う快感が襲う。クリトリスには歯を立てられて、幾分か乱暴だ。
乱暴だけど、私が欲しいのはこれじゃない。

「あっ、あ、だめ、いっちゃう、いっちゃう」

私の切なさなんて快楽の前では小さなもので、じゅぷじゅぷ音を鳴らしながら責め立てる指には敵わない。

「一緒に、っあああっ」

また少しの潮を噴いて、私は1人でイった。
はあはあと呼吸を整えていると、ガサガサと布団が擦れる音がする。

「そろそろかわいいナマエを見せておくれ」
「っ、見ないで、」

ベッドの上側に移動してきた彼が布団を捲ろうとするのを阻止できず、私の情けない泣き顔が晒されてしまった。彼は少し驚いた表情をして、すぐにいつもの読めない微笑みを浮かべる。
最初はあんなこと望んでなかった、指だけでよかった。
気持ちいいセックスをしてくれる彼に満足していた。

「寂しかったのか」
「そうじゃないけど、そうかも」
「今日はここに泊まっていくかな」
「本当?」
「たまにはな」
「……好き」
「よく言うわい」

こうやって彼に甘やかされるたびに歯止めが効かなくなりそうで怖い。
でもわかっている。
明日渡される札束を見て、やっぱりまた彼の死因のことを考えるのだ。

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