いつも私が洗濯しているお召し物が再び私の手に戻る時、クロコダイル様用に厳選した洗濯洗剤の香りとクロコダイル様の香りと葉巻の香りが混じり合ったとても良い匂いがする。
私の知る“クロコダイル様の匂い”は、この匂いだ。
仕事を終えたあとのクロコダイル様は、何故こんなに色気に満ちているのだろうか。疲労でかげった表情や、へたれかけた髪のボリューム、汗の匂い。
「お帰りなさいませ」
「ああ」
バサリとソファに投げつけられたコートを拾い上げてハンガーにかけた。
もう少し、背が高ければよかった。
クロコダイル様の身の回りのものは、何をするにもすべてが少し大きすぎる。コートの裾を引きずらないように持ち歩くのも慣れたものだけれど。
専用の大きなソファにどかっと腰を据えたクロコダイル様が葉巻を咥えた。傍に寄って炎をかかげると、すぷ、という一瞬の吸い込む息遣いの後に間をおいてから大きなため息をついた。
「お疲れでいらっしゃいますね」
「風呂にはいる」
「準備はできております」
「ああ」
これを吸ったら、と言いながら紫煙をくゆらせながら鉤爪の手入れを始める。
手入れを終えたクロコダイル様が無言で右手をちらつかせたのを合図に、私はその傍らに跪いて指にはめられた指輪を一つずつ抜き取り、テーブルに準備された台座に置いていった。
初めてクロコダイル様の指輪を抜き取った時、見てはいけないものを見ているようで、思わず目をそむけてしまった。今はそんな様子にも慣れて、使用人という立場上いろいろなクロコダイル様を見る事にも慣れた。
慣れたというのは行為自体にという事で、どんなときもクロコダイル様は美しく、私の目を奪った。私は、どんなときのクロコダイル様にも慣れない。
「アァ?」
「っ」
太くてたくましい指も、咥え煙草のまま煙をふかす口元も、眉間に寄ったシワも、本当に私と同じ生き物なのかと疑ってしまいそうになるほどに美しい。
指が震えて、うまく指輪を外せない。
どういうわけか、今日はいつもよりもその様子が目についてしまい、指先からそっと視線を上に這わすと、不器用な私に不愉快そうな視線を向けていたクロコダイル様と目が合ってしまった。
「申し訳ございません」
「何故謝る?」
「いえ、その、あまりの美しさに」
「見とれていたのか」
クロコダイル様は私の手を振りほどくと葉巻を灰皿に置き、そのままベストのボタンをひとつだけ外した。あとひとつだけ残された小指のオパール。
ソファの位置から見つめられているせいで、見下された瞳に射抜かれてしまう。私は何も返す事ができずに、言葉につまったままクロコダイル様を見つめた。
「どうした」
いえ、とか、あの、だのと普段クロコダイル様が嫌うようなはっきりとしない言葉しか出てこなくて焦る。
焦れば焦るほど私の頭は真っ白になって、くらくらした。目の前にいるはずのクロコダイル様が滲んでいく。なんでこんな事になったのかよくわからない。クロコダイル様が帰ってきて、いつものようにしていただけなのに。
なのに、どんどんクロコダイル様に嫌われる駄目な自分になっていく。
「あとひとつだ、外せ」
「は、はい、かしこまりました」
差し出された手のひらに恐る恐る触れると、罠にかかったかのように突然腕を掴まれて、滲んだ世界がふわっと浮いた。
足元からすくわれたかと思うと、クロコダイル様の顔が近くにあって、私はクロコダイル様の膝の上に向かい合わせて跨るように座っている。
「あっ、あの」
「風呂に入りたい」
「申し訳ございません、すぐに退きます」
「おい、おれが乗せたのに降りるつもりか?」
「えっ、あ、あの」
クロコダイル様の真意がまったく見えずに狼狽しきりだった。
クロコダイル様の鉤爪が首に回され、少しでも動いたらその切先が触れて皮膚が切れてしまいそう。右腕は私の背中に回されてファスナーを降ろした。
「生憎おれは両手が塞がっている」
「はい」
「脱がせ」
「え」
鉤爪を揺さぶられると冷たい金属が首に触れてびくりと体がはねる。
ファスナーを降ろされた背中の解放感にぞくりとした。背骨をなぞるように這わされたごつごつした指先が下着のホックを外す。
「それとも先に脱がされたいのか」
「違います!」
鉤爪に固定されて、手元を確認する事ができない。
たどたどしくクロコダイル様のボタンを探るようにすると、必然的にクロコダイル様の胸元を触ってしまった。初めて触れたクロコダイル様のお体に、指先の震えが止まらなかった。
毎日焦がれるような眼差しを向けていた相手が、こんなに近くにいて、あまつさえ私はその膝に乗って胸元を弄るなど、考えられぬ事だ。
「ァア、そんな手つきじゃ外せないな」
「申し訳ございません」
私がもたついている間に、クロコダイル様は下着もろともワンピースの袖を両腕から抜き取っていた。
私の両腕はクロコダイル様の胸元に挙げられていたはずだけど、クロコダイル様の前にして私の意思などあってないようなものだ。
だけど、それにしたって……
「だ、駄目です、クロコダイル様!」
「おれに逆らうのか」
「ですが」
「なんだ」
「は、恥ずかしい、です、し……」
クロコダイル様に伸ばされた手を引っ込めて自分の体を覆った。
いくらなんでもこんなことしてはいけない。
だって私は使用人なのだ。私がいくら焦がれた所で、私などと関係を持ってしまってはクロコダイル様の汚点になってしまう。叶うことのない願いなら、一片の期待もない方が余程も幸せだ。
「私は、使用人、ですから」
「……」
クロコダイル様は私の首元からそっと鉤爪を外して彎曲した部分を私の口に宛てがい、ぐっと奥に押し付けた。
閉じることを許されなくなった私の口元から唾液がこぼれ、首筋を伝う。
「おれに逆らうのはこの口か」
「くおこあいうはま」
「なんだ?」
こぼれた唾液をすくうように、クロコダイル様の唇が首筋に触れた。
じゅるじゅるとわざとらしい音を立てながら吸い付く唇が卑猥で、体中の筋肉が緊張していくのがわかる。胸を覆っていた私の左手を、クロコダイル様に掴まれ、指と指を絡ませながらクロコダイル様の腰に持って行かれた。
右手も同じようにされて、私はクロコダイル様の腰を抱いているように見えるだろう。
「ここに置いておけ、命令だ」
「っ」
クロコダイル様の前で大して美しくもない貧相な体を晒している羞恥や、焦がれたクロコダイル様に触れられている事、首筋に這う快楽。
いろいろな状況が私を煽り、泣きそうだ。
空気にさらされて敏感になった皮膚があわだつ。妙な肌寒さの中で乳首が痛いほどに立っているのがわかって、余計に恥ずかしい。
絡ませた指が離れて行くと、ツゥ、と脇腹を撫でられて緊張した体が脈を打った。思わず腰から手を離してしまうと、再び鉤爪は首に戻されて小さな痛みが走る。“彼の指先”が私に触れたのだ。
「命令だと言ったはずだが」
「申し訳、ございません」
クロコダイル様の低い声が耳元で囁いた。
もうこれ以上嫌われないように、恐れ多くもクロコダイル様の腰に手を据える。滲んでいるであろう血液を吸い出すように首筋に噛み付かれ、あたたかい舌が這いまわった。
「あの、クロコダイル様、なぜ」
「無粋な女だ」
器用に鉤爪を操られ、私の顔はクロコダイル様の方へ持ち上げられてしまった。逃げ場のない状況で頭に血が昇っていくのを感じた。
クロコダイル様の深い色の瞳が私を刺す。
「んっ、ふ」
ゆっくりと近づいたその唇が私の唇を塞いだ。クロコダイル様から耳に指がねじ込まれ、舌を捕らえられて犯される水音が頭の中でうるさいほどに響いている。
なんでこんなことされているのだろう。クロコダイル様の戯れに、選ばれたのだろうか。
夢みたいで、夢ではなくて、夢でないのなら、ずっとこうしていたいなどと身分不相応で、願いというには欲望のすぎる思いまで抱いた。
悲しい。
耳から下に降りていく指先が貧相な私の胸を包み、絞るように揉んだ。かさついた固い指先。感触を楽しむほどもない質量だろうに、何度も繰り返されたその行為が私の劣情を煽る。
「ふ」
「っは、ん……」
顔面に感じるクロコダイル様の吐息が、これが現実である事を感じさせる。クロコダイル様の指先に乳首を摘まれ、ぐり、と潰され、思わず両手を離してしまいそうになった。耐えるように腰に添えようと、クロコダイル様のシャツを握ってしまう。
「そうだ、離すなよ」
いい子だ、と言われ、ぺろりと唇を舐められる。
クロコダイル様に褒められた。嬉しい。
クロコダイル様の大きな体には、私の身長は小さすぎる。私の体を触るために大きな体を折りたたむクロコダイル様のうなじが目に入り、不覚にもそのお姿に可愛いなどと思ってしまい、こんな事を思うなんて本当に出来の悪い使用人だと自分を叱責したくなる。
頭を撫でられ、鎖骨を舐められ、胸を舐められ、乳首を甘噛されるたびに我慢できない上ずった声と、動物のような吐息が止まらない。
いつの間にか首元の鉤爪ははずされ、腰に添えられていた。こんな所に鉤爪を置かれては、本当に動くこともできない。
びくりと震えれば、腰の鉤爪がちくりと触れて、新たなる刺激を与える。ふいに腰に置いた左手を掴まれると、クロコダイル様の首に回すように肩の上に放られた。もう片方は自分でしろ、と命令されて、恐る恐る右手もクロコダイル様の首に回す。
きちんと命令に従えると頭を撫でて褒めてくれた。
「クロコ、ダイルさま」
「ん?」
「こんなこと」
「また血を流したいか」
「違います、こんなこと、されては、私」
「ァア?」
あなたの事を考えずにはいられなくなってしまう。
ただでさえ、私の狭い世界はあなただけでできているのに。
「お前の自由は許さない」
「は、い」
私にこんな事を言える権利はないけれど、クロコダイル様はずるいお方だ。私の気持ちを知りもせずに、弄んで、こんな風に支配して、あなたの隣に居る事は許されないのに。
「んっ、ふ、」
「どうした」
股関節の筋に沿うように撫でられると、子宮がうずくのを我慢できなかった。今まで考えないようにしていた下半身のぬめりを感じずにはいられない。クロコダイル様の指先が下着越しにそこに触れ、私が感じている事がばれるのが恥ずかしい。
パンツの中でぐちゃぐちゃになっていく様子がありありと浮かんで、あまりの羞恥にクロコダイル様の首にしがみついた。
「濡れているなあ?」
「っあ」
「返事をしろ、濡れているな?」
「は、い」
腰に添えられた鉤爪が少し動くと、器用に私の下着を切り裂いて、すぅっとした空気が下半身を襲った。幸いにも私のワンピースがそこにまとまっていて、破廉恥な下半身を見られずに済んだ。
「どうして濡れたんだ?」
「それは……」
「んん?」
私のそこから離れていった指先に少しさみしくなったのも束の間に、その指先はガーターベルトのサスペンダーを外し、ストッキングとパンツを脱がしていった。唯一の心の拠り所であったワンピースさえも、上から脱がされてしまい、私はクロコダイル様の上に全裸で跨り、首に腕を回していた。
素足に触れたクロコダイル様のトラウザーズがひんやりとして、私だけがあられもない姿でいることを思い出させる。
私は、クロコダイル様と、いやらしい事をしている。
「お前のせいで、おれの服が汚れたな」
「も、しわけ、ござっ、ああっ」
どうしてくれる?
至近距離で見つめられて、鉤爪で顎を捕らえられて、低い声で囁く。
濡れそぼったそこにクロコダイル様の指が触れた。愛液を塗り広げるように太い指で撫で回され、まともに喋ることすらできない。
「何故濡れている」
「っふう、ぁ、ぁ、」
執拗にクリトリスをくりくりと弄ばれ、耳の穴を舌で犯され、クロコダイル様のお言葉に答えられない。
どっちにしても、答えられない。
私、こんなにはしたないなんて。
「答えろ」
「っ、きも、ち、いいから、です」
クロコダイル様の中指が少しだけ私の膣に挿入されて、そこで浅い抜き差しを繰り返す。クリトリスは親指で優しく撫でられて、まるで焦らされている。
恥ずかしさでクロコダイル様を直視できずに下に顔を向けたら、こんな光景が目に入るなんて、クロコダイル様は意地悪だ。
「お前は犯されて感じるのか」
「ちが」
「随分と淫乱なようだな」
「それは」
クロコダイル様だから……
言いそびれたまま、クロコダイル様に唇を塞がれて再び腔内を犯された。
犯されて感じているのは、本当だった。ゆるゆると抜き差しされる指がもどかしいとさえ思っている。本当はもっと奥にほしい。私は、いやらしい生き物なのだ。
恥ずかしい。
こんなことを望むなんて。
「腰が動いているが……」
「ごめんなさい、ごめ、なさ」
もっとめちゃくちゃにして欲しくて、クロコダイル様を見つめた。
蔑んだような瞳で見られ、何故か興奮する。もっと蔑んでほしい。このまま、幸せなまま、殺してほしい。
いつの間にか涙がこぼれ、自分からクロコダイル様にキスをせがんでいた。
「んっ、ふぅ」
「っおい」
「ほしいです、入れてほしいんです」
「何を?」
「指を、もっとおくまで、ほしいです」
涙を流しながら腰を押し付けた。やっと奥に届いたクロコダイル様の指は、中で折り曲げられて今まで感じたことのないような快感を呼び起こす。
涙でにじむクロコダイル様の顔は、満足そうに私を見下していた。
なんだかよくわからないけれど、その表情を見られた事がとてもうれしくて、クロコダイル様の指が私の中にいることがうれしくて、心地よくて、嬌声が止まらない。
「っあ、ああっ、あっ、ありがと、ございます、」
「ここがいいのか?」
「んっんっ、はい、きもち、い、です、あっあっ、イっちゃ」
中でグチュグチュと内壁をくすぐられ、クリトリスをぐりぐりと押しつぶされると熱を持った下半身に快感の波が押し寄せた。
ヂュ、ヂュッ、
ぷちゅ
『どうした淫乱、声も汁も止まらないなあ』
耳元で囁かれる声は私の脳内に直接訴えかけて、それが全部快楽に変わっていく。
「やっ、ああっ、ク、コ、ダイルさまあっ」
「嫌じゃないだろう」
「いやじゃな、です、イっちゃうんです、イっちゃ、う」
鉤爪で固定された顔はクロコダイル様の方を向くことしかできず、クロコダイル様に見つめられてしまっては目を逸らすこともできず、水音を響かせながら、私はクロコダイル様と見つめ合いながら果てた。
ダラダラと垂らした愛液がクロコダイル様のトラウザーズを濡らし、私の太ももがひんやりと冷えた。
自分で垂らしておきながらその感触が気持ち悪いのと、恥ずかしいのと、申し訳ないので、もぞもぞと下半身を動かす。
ふいに硬いものが触れて、クロコダイル様のペニスが勃起している事がわかってしまった。
思わずクロコダイル様を見ると、脱がせ、と命令されて手探りでベルトを外してファスナーを下ろす。下着を上手く脱がせられずにいると、クロコダイル様はしびれを切らしたように舌打ちをして自ら下着をずらした。
下着の奥から現れたクロコダイル様のペニスが私の秘部に擦りつけられる。
クロコダイル様は私の手を取るとペニスに触れさせた。起ち上がったペニスはとても熱く、こんなに熱くて硬いのに、柔らかい皮膚の肌触りがとても不思議だと思った。
感触を確かめるように触っていると、クロコダイル様は強引に腰を動かして秘部への刺激を強める。クリトリスに触れるたびに声が漏れた。
しかし、もともと体の大きさが違いすぎるのだ。こんなに大きなの、入るのだろうか……
「お、きい」
「欲しいのか、欲しくないのか答えろ」
ん? どうなんだ?
と、問われながら、何度も唇を吸われた。それはまるで、愛しているとでも言っているかのような優しいキスに、勘違いしそうになる。
もう二度と、こんなに幸せなこと。
「ほしいです」
私が言葉を発すると同時に、クロコダイル様のペニスが私の中に侵入した。圧迫されるその大きさに思わず目をつぶると、クロコダイル様のが目元に落ちて涙を舐められた。
なんでこんな事するのだろう。
ここまで来て、今更ながらにとてもとても悲しくて、涙が止まらなかった。クロコダイル様の熱を知ってしまった。
行き場を失った手が宙を舞うと、クロコダイル様の手のひらがその手を掴んだ。さっき腰に導いた時のように指を絡ませて、まるで、恋人みたいで、
「そんなに痛いか」
「ちが、ごめんな、さ……」
私の膣をほぐすようにゆるゆると腰を動かされて、突き動かされるたびにぽろぽろと涙がこぼれた。
クロコダイル様は私の様子を余裕たっぷりに見つめている。こんなに苦しい思い出と期待を抱えたまま一生を過ごすくらいなら、いっその事すべてを終わらせた思い出になれば良いと思った。
「好き」
「……」
「好きなんです、ごめ、な」
言い終える前に唇を塞がれた。
優しく唇を舐められて、首の鉤爪でクロコダイル様の胸元に引き寄せられた。私を抱え込んだクロコダイル様のペニスがぐっと大きくなるのを感じる。
繋がれた手のひらに力が込められ、指の骨がきしんだ。
「もう一度言え」
「え」
「いいから、もう一度言え」
「す…… 好き、ですっ、ああっ」
ぐちゅん
一度大きく突き上げられたのを皮切りに、何度も何度も深く突き上げられる。繋がれた手は再び首に回すように命令され、両腕でクロコダイル様の首を抱いた。
好きという言葉と喘ぎ声が入り混じる中で、何度もクロコダイル様の名前を呼んだ。願わくば、このセックスを、クロコダイル様が忘れることのありませんように。
「好きっ、クロコ、ダイル様、っ、あっ、あっ、は、好きですっ」
「っ、」
クロコダイル様の手のひらが再び私の秘部に触れると、愛液をまとわせた指先で、クリトリスを撫で回された。
押し上げられた子宮と、擦られる内壁と、痺れるようなクリトリスへの刺激がいっしょくたになって繋ぎ目で爆発しそう。
「あっ、だめ、クロコダイル様ぁ」
「駄目じゃないだろ、ちゃんと言え」
「っあふ、出ちゃう、出ちゃうから駄目っ」
「っ、つ、一緒に、出してやる」
ちゅぱん、ぢゅっ、ぴしゃっ、
ひときわ大きな水音とともに私のぐちゃぐちゃになった液体がそこに溢れかえり、私は大きな快楽に包まれた。
ふわふわと浮かぶような心地よさをえぐるようにクリトリスへの刺激が止まず、すぐに現実に引き戻されて喘ぐのを止める事ができない。イったばかりなのに、クロコダイル様のペニスをぎゅうぎゅうと締め付けてしまう。
「あああっ、あっあっ、駄目ですっ、駄目ですっ、またっ、イっちゃうから……!」
「何度でもイけばいいだろ、っは」
「あっあっああっ」
「何度もイかせてやる……!」
「ううあああ!」
どくん
と、鼓動のような大きな脈を感じたあと、それに少し遅れて膣の奥に温かい液体が広がる。このままクロコダイル様の子を宿す事ができやしないかと、僅かな期待だけで膣の収縮を繰り返した。
「ナマエ、っ……」
「好きなんです、ごめんなさい……」
胸元に寄りかかって、クロコダイル様に抱かれている、夢の様な時間。
あなたに何かを望むなんて、そんな事しないから、今だけは私の気持ちを聞いて欲しい。
「おい」
「っ、はい」
鉤爪で引き剥がされると、クロコダイル様と目が合った。
私は今どんな表情をしているのだろうか。泣きじゃくって、恥ずかしげもなくイきまくったあとの顔なんて、見るに耐えない顔なのだろう。
「ひでえ顔だな」
「っ……」
顎から目にかけて、涙のあとをたどるように指先が伝い、そのまま頭を掴まれて酷く優しいキスをされた。
愛しむようなキスは、角度を変えて何度も唾液を送り合い、いつしか口端からこぼれた唾液が喉元に落ちる。
「ナマエ」
「は、い」
「お前を泣かせるのも、喜ばせるのも、おれだけだと誓え」
「っ……」
「おれの屋敷から一生外に出ないと誓え」
クロコダイル様は唾液で色っぽくなった唇を上手に使って、小指にはめられたオパールの指輪を外した。
「誓え」
「誓いま、す」
いい子だ、そう言って、クロコダイル様はオパールの指輪を私の薬指にはめると、もう一度優しくキスをくれた。
ぶかぶかの指輪は、すぐに外れてしまいそうに不安定だったけれど、それを抑えこむようにその手はクロコダイル様の指先に絡め取られてしまう。
「おれのために笑え」
「はい」
「今すぐ」
「はい」
「おれにキスのひとつでもしてみろ」
「……はい」
ぐっと手のひらを引き寄せられて近づいた顔の距離を、自らつめる事を許された。
触れるだけのキスをして、私は命令通りにクロコダイル様に微笑むと、クロコダイル様は満足そうに私を見下ろした。