DEAR.三蔵 03|親愛なる

悟浄と悟空の目は誤魔化せても、僕の目はごまかせませんよ。
と、最近の三蔵とナマエを見ていてそう思う。

「次の誦経いつ?」
「……明日」
「行ってもいい?」
「いつも勝手に来てんだろうが」

あなたはいつから三蔵の前でそんなふうに笑うようになったんですか?
ずっと近くで見守っていた僕としては、すこーしばかり嫉妬してしまうけれど、ナマエにとってはとても良い変化だったと思う。彼女にとって必要だったのは、きっと僕のような内側の人間ではなく、三蔵のような外側の人間だった。

「あ、八戒、今日の買い出し私が行ってもいい?」
「僕が行きますよ?」
「買いたいものがあるの」
「それならお任せしますね、行ってらっしゃい」

ナマエを買い出しに送り出すと、久しぶりに三蔵と二人きりになった。
こんな千載一遇のチャンスを逃す訳にはいかない。すかさずコーヒーを淹れて三蔵に差し出して向かいに座る。

「さて三蔵、お話があります」
「……なんだ」
「いつの間にナマエとしたんですか?」
「はあ? なにを」
「とぼけないでくださいよ、したんでしょ? セックス」
「してねえ」

三蔵だったら潔く認めると思ったけど、想像に反して否定の言葉が返る。本当にしていないのだろうか。それにしては以前より距離が近い気がするけれども。
もしやもっとピュアな交際を? まさかナマエと三蔵がくっついてそうなるとは想定外だった。

「じゃあ付き合ってるんですか?」
「見りゃわかるだろーが」
「やっぱり…… いつから?」
「どこをどう見たらそうなるんだ、付き合ってない」

そんな馬鹿な。
だってナマエは以前よりずっと自然体でいられるようになったし、本人的には気づいてないかもしれないけれど三蔵はよく微笑んでいる。
どう考えても二人の関係になんらかの変化や進展があったというのが自然な流れではないだろうか。

「じゃあ振られたんですか?」
「さっきからなんなんだ、俺とあいつが何故そうなるのか甚だ疑問だが」
「なんですか、とぼけちゃって。彼女のこと好きなくせに」
「!?」

寝耳に水といった勢いでこちらを見てくるけれど、バレていないとでも思っていたのか。煙草に火をつける仕草から動揺が伺える。

「ずっといつ行動に移すんだろうと思ってたんですけど」
「余計なことするなよ」
「わかってますよ」

三蔵がナマエに好意を抱いているのは知っていたけど、その実それが恋愛感情なのかそうでないのかはよくわからなかった。
だけど好意は素直に認めるあたり、おそらくそれは恋かもしくはそれ以上の異性としての好意ということだろう。そして今更動き出したということはそれなりに覚悟もあるはずだと思う。

「早くくっつけばいいのに」
「あいつに言えよ」
「僕には言えません」

僕だったら待ちの姿勢で何年もじっとしてるなんて無理だけど、それが悟浄にとって、巡り巡って自分にとって、幸せである事を彼女自身知ってしまっている。本当になんと言っていいか、ただただ不憫だ。
ナマエに幸せになって欲しい気持ちはもちろんあるけれど、それと同じくらい悟浄の幸せも大事に思う僕は、彼らのなんの役にも立てない。

「じゃあ俺にも言うな」
「すみませんねえ、お節介で」
「フン」

僕らにとって最高の形とはなんだろう。
誰も苦しまず、心から穏やかな気持ちでいられる、そんな日が早く来ればいいのに。

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